人と人に相性があるように、人と物にも相性があって然るべき。


まして食べ物となりますと…?


 

 

02.すききらい

 

 

「ラスティ、ピーマン。一つは食べろよ。」




ランチタイムの食堂。
俺の右隣の席に座りながらイザークが言い放った。
俺はプレートの中を見て、ちょっと顔を顰める。
イザークとディアッカは俺の幼年学校以来の幼馴染。お互いのクセも好き嫌いも何でも知ってる。
だから今日のメニューにピーマンの油炒めが入ってるのを見て、即座に俺に釘を刺した。




「わかってるよ!でも後は食べてくれんだろ…?」
「フン、仕方がないな。その代わりこのセロリはお前が食べろ。」
「イザークも一本食べるんだぞ。」
「わかっている。」
「…ホント変わんねーのな、お前ら。」




イザークの前に座りながらディアッカが苦笑した。
その後ろからミゲルやアスラン、ニコルもやって来て席に着く。
別に決まってるわけではないけど、だいたいミゲルは俺の前に座るしアスランは俺の隣、ニコルはその前に座る。
お互い食事時くらい余計な論争は避けようと暗黙の了解が出来てんのかもしれない。




「どうしたんですか?」
「んー?いやぁね、ラスティとイザークが今日も上手く取引が成立したなと。」
「何の話だ?」
「すききらいの話だよ。俺ら嫌いなもんがあったら、一個だけ食べるって約束で、残りは誰かが平らげるって決めてんの。」




まぁ俺は嫌いなもんなんてないけどな、とディアッカが笑う。
俺は早々にピーマン一個を食べ、イザークのプレートに残りを移す。
イザークも苦々しい顔をしながらセロリを一本食べ終え、残りを俺のプレートに寄越した。




「ホラな。いっつもこうやってんの。」
「仲が良いというか、狡賢いと言いますか…」
「一つは食べるからいいんだよ。なっ、イザーク!」
「だいたいそんなに好き嫌いなんてない。たまにだ。」




そう言って俺のピーマンにフォークを突き立てる。
俺もイザークのセロリをきれいに平らげた。
と、いきなり目の前のミゲルが立ち上がる。
ビックリして見上げると憮然とした顔をしてプレートを持ち、残ってた豆の煮物をイザークのプレートにザラッと空けた。
驚いて固まるイザークを他所にさっさとプレートを片付けると食堂を出て行ってしまった。




「あっ、ミゲル!?」
「何だアイツは!!いきなり人の皿に食べ残しを空けるなんて何を考えてる!」
「(めちゃめちゃ怒ってる;;)あー、イザーク、その豆、俺が食べるよ。」
「俺がもらってやるよ。だからお前はさっさと追っかけた方がいいんじゃねーの?」
「…サンキュ、ディアッカ。」




残ってたメシをざっとかき込んで俺も席を立つと、食堂を出てミゲルを追いかけた。








「ミゲル!」




食堂を出て、ミゲルたちの部屋へ向かう通路の途中でミゲルを見つけ、慌てて声をかけて走り寄った。
ミゲルは立ち止まった後ちょっと振り向いて、バツの悪そうな顔をした。




「どうしたんだよ、ミゲル。何か俺悪いことでもした?メシの途中で席立つなんて」




ミゲルは普段すごくきれいに食事をするひとだった。
箸やフォークの持ち方とかテーブルマナーとかもそうだけど、なんていうか雰囲気がすごくきれいで、だから俺はミゲルが食事をする所を見るのが好きだった。
そんなミゲルがあんな風に席を立つなんてよっぽどのことじゃないとありえない。




「いや…ワリ、ちょっとヤキモチ。」
「へ?」
「お前とイザークとディアッカ。幼馴染なのは知ってんけどあんなに仲良いとこ見せ付けられるとな、ちょっと凹んだわけさ。」




さっきとうって変わっていつものように明るく、でもちょっと決まりが悪そうに言ったミゲルの言葉に、鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。
だってそんな風に思ってもらってるなんて考えもしなかったから。
…嬉しいとか思ったら、マズイかな。
でも嬉しいんだけどどうしよう。




「ミゲル豆嫌いなの?」
「あー…実はな。」
「じゃ、今度からミゲルの豆は俺がもらうから。」
「え?」








「その代わり、俺のピーマンはミゲルが食って?」








そう言って笑ったらミゲルが目を丸くした。
でもすぐにフッと顔の表情を和らげると、ミゲルは俺の頭を両手でグシャグシャッてかきまぜた。
あ、やった。笑った!
俺の大好きないつものミゲルの笑顔だ。




「あ、でも一個は食べるんだぜ、コレ決まりだからな。」
「わかったよ。」
「あとでイザークに叱られんよ。イザーク食事のマナーにはすっげー煩いから。」
「覚悟出来てるよ。」
「ねーミゲル、ヤキモチ妬いてくれてちょっと嬉しかった。」




俺がそう言ったらまた頭グシャグシャッてやられた。
ちょっと痛いけど、ミゲルの照れ隠しかなーなんて思ったらちょっとまた嬉しくなった。
俺、ちょっとは想われてんのかなーなんて。
…言わないけどさ!




 

俺も大スキだよ!




【反省と言うよりむしろ言い訳】


「嫌いなものも一つは食べましょう。」コレうちの母の格言。
イザークは結構食事時は口煩そう。
でも自分が嫌いなものある時はちょっと静かになるの(笑)。
ヤキモチ妬きミゲルさんでお送りしましたvvミゲルに妬かれるってちょっとドキドキします。
しかし如何せん甘くない。甘くないぜよ!




2004.01.30