そして、今日もまた朝が来る。


 

 

07.シアワセ

 

 

朝の光が柔らかく差し込む、ベッドルーム
シーツの海に深く体を沈めて、幸せそうに眠る人。
伏せた長い睫毛に細い金髪がかすかにかかる。
そっとその黄金色の髪に手を通して、サラサラと指で掬っては落とす。
額に手を伸ばしてかき上げては、指先で肌のぬくもりを感じる。
この手に触れる感触は間違いなく、今、ここにある、現実。
その事実が嬉しくて、思わず笑みが零れ落ちる。
こうして、毎朝、ミゲルの寝顔を見られることがこんなに嬉しい。
毎朝こうして見てても、まだ実感がわかない。
こうして夢じゃないことを毎朝確かめずにはいられなくて、
この温かさと確かな感触に、幸せを噛み締める。




「ぅん…っ」
「ミゲル…?起きた?」




返事はない。
しばらくすると、またスヤスヤと安らかな寝息が聞こえてきた。
寝返りをうってこちらを向いたその姿に、悪戯心がムクムク膨らむ。
いつもだったら絶対しないこと。でも、今朝だけはどうしてか、やってみたい衝動に駆られて
そっと、ミゲルのパジャマの一番上のボタンを外した。
首の周りが少し楽になって、真っ直ぐな鎖骨が顔を覗かせる。
ゆっくりその首に唇をあてて、柔らかな肌をほんの少しだけ吸う。
色の白いミゲルの肌に、薄い桜色の花が咲いた。
その跡に、またどうしようもなくドキドキして、頬が緩んだ。
うん、満足。




「ミゲルー、起きてー朝ですよー。」




と、いきなり手を引かれて、バランスを崩した俺はそのままベッドに倒れこんだ。
思わずギュッと目をつぶったけど、思ったより衝撃はなくて
そうっと目を開けると、目の前にニヤニヤ笑ったミゲルの顔があった。




「ミゲルッ!もう、いきなり引っ張らないでよっ!」
「俺がイイ男だからってそんなに見つめてんなよ。穴が開いちまいそうだ。」
「起きちゃってたの!?」
「起きてたよ。お前が部屋に入って来た時からな。」
「えぇ!?」
「毎朝何分俺の顔見てれば気がすむんだよ。髪弄ったり顔触ったり。」
「あっそっそれは…だって」
「しかも今日はこんな所にオマケつき?どうせなら起きてる時にしてくれよ。」
「〜〜〜〜っ!!」




やだやだやだすっごく恥ずかしい!
絶対気付いてないと思ってたのに!思ってたのに!!
キスしたのも気付いてただなんて!
あんなことして…俺、朝から一人で欲情してるみたいじゃん!
ああもう穴があったら入りたい・・・!




「どうしたんだよ、ラスティ。顔隠すなよ、見えないだろ。」
「見ないでよぉ…」
「何で。見せろよ。真っ赤んなってるお前の顔、可愛いから好きなんだよ。」
「ミゲル悪趣味だぁ…」
「んー、今日も可愛い。おはよ、奥さん。」
「…おはよう、旦那さま。」




伸びてきたミゲルの腕に体を預けて、俺も腕を絡めて、オハヨウのキスをした。








朝の光がレースのカーテン越しに差し込む、リビングダイニング。
テーブルの上に出来立ての朝食が並ぶ。
彩りよく、バランスもいい。
皿にまでこだわりを持って盛り付けるラスティの姿を見ながら、コーヒーを淹れる。
もう、見慣れた光景のはずなのに、どうしてかこんなにも頬が緩んでくる。
俺は今、相当間抜けな、だらしない顔をしてることだろう。




「準備できたよ。」
「ああ、こっちもちょうどいい。カフェオレだろ?」
「うん。」




朝の光に負けないくらいの光を放つ、オレンジ色の髪と笑顔が眩しい。
思わず目を細める。
俺はもうそうとう末期なんだろう。
この光のように、手を伸ばしても掴めないんじゃないかと
目を覚ましたら消えてしまってるんじゃないかと
不安になって、お前がそうしてる姿にようやく安心してる。
可笑しいな。まだ、一緒にいる実感が湧かないなんて。


ダイニングテーブルに向かい合って座って、顔を見合わせて『いただきます』をする
こんな瞬間が、とても好きだ。
生きている実感をひしひしと感じるんだ。




「うん、美味い。」
「ホント?ありがと。」
「やっぱ朝はお前のメシが一番だな。」




ラスティが少し赤らめた顔で、はにかんだ。
付き合ってた頃にも、こうしてメシを作ってくれたことがあった。
その時は、毎日作るなんて嫌だなんて言ってたのに、結婚した今はこうして毎朝、手作りの朝食を用意してくれる。
俺はラスティにそう強要したつもりもないし、家事は分担しようと決めていたのだが、ラスティが朝は作ると言ってくれた。
それが、俺はとても嬉しかったんだ。
ラスティの作ったものは、俺の欲目抜きに見ても凄く美味い。
もともと食べることに人一倍執着のあるラスティだから、本当に美味しいものが作れるんだろうな。
それが毎朝、他の誰でもない、俺のために作られてる。
きっとこれ以上の贅沢なんてない。
少なくとも俺の中では、何よりのご馳走だ。




「いつもありがとな」
「何?改まって。」
「お前も朝は眠いのに、こうして朝飯作ってくれてさ。美味いよ、ホント。また腕上げたろ?」
「そう…かな?でもね、辛くないよ、俺!…だってミゲルの喜ぶ顔、見たいし…。」




……ああもう、朝っぱらからそんな嬉しいこと言ってくれるなよ。
いくら今日が休みだからって、起きて早々はマズイだろうが。
…なんて、さっき一回しちまったけど。(お前が誘ったんだよ、アレは)




「ミゲル?」
「メシ食ったら、二回戦行く?」
「……やだ。」
「じゃあそんなこと言うなよ。」
「ホントのことだもん。」
「じゃ、今日は遊園地にでも行くか。」
「マジで!?」
「ああ。俺も、お前の喜ぶ顔が見たいしな。」














例えばこんな毎日がずっと続けばいいとそう願うこと。


明日の朝も、この寝顔を見たいとそう思うこと。


明日の朝も、この朝ご飯を食べたいとそう思うこと。


一緒に、生きているということ。


きっと、それが俺たちのシアワセのカタチ。




 

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【反省と言うよりむしろ言い訳】


バカップルぶりを発揮。明け透けでスミマセン;
新婚なんてこんなもんですよ!きっと!!(笑)
砂吐きそうですけど、書いていてすごく楽しかったです。
しかしお題の最後がパラレルってどうよ、自分。
とにもかくにも7のお題・ミゲラス小説コンプリート。
ここまで読んでくださってありがとうございました!




2004.03.29