|
天気のいい日は何をしようか。
06.鬼のいぬ間に
カタカタカタカタ
手がリズミカルな音を立てて、キーボードを滑っていく。
今日はアスランとニコルと一緒に、データ整理と構築。
時々、向かいの席のアスランがチラチラ俺のほうを見る。
明らかにその表情が、不安だ心配だ、と俺に訴えてる。
いくら俺のあだ名がクラッシャーラスティだったからって、五分おきに見るなんてどうかしてるよ
理科の観察じゃあるまいし。失礼な。
スクール時代に情報処理の成績、そんなに悪くなかったの知ってるだろ!
これくらい大したことないんだから!
ぷんぷん。
「ラスティ、エラー音出てるぞ。」
「え?うわっ!ホントだ!いっけない、変なとこ押してた。」
「考え事すると手元が留守になる癖って、ホントだったんですね。」
慌ててエラー音を止めると、ニコルがクスクス笑いながらそう言った。
……イザークだな。
もう、すぐ俺のバカ話とかニコルに言っちゃうんだから。
ふーっと息をついたら、後ろからポコンと頭をたたかれた。
くるっと振り返って、思わず頬が緩んでしまう。
ミゲルだったから。
「よぅラスティ、ちゃんとやってるか?」
「やってるよっ!ミゲルこそどうなの。」
「俺は今終わったとこ。お前も午後からフリーだろ?」
「うん、そうだよ。」
「よっしゃ。じゃ、どっか行こうぜ。時間あるし、久しぶりに街のほうとか出られるんじゃねぇか?」
「三時のおやつ付き?」
「もちろん。」
「やったー!頑張る!!」
「じゃ、昼前に迎えに来るから。終わらせとけよ」
ミゲルが片手を上げて、颯爽と出て行くと、ニコルが意味深な目配せを送ってきた。
思わず俺も満面の笑みで返してみせる。
と、アスランが手を止めて、俺を見た。
「手伝わないぞ。」
「手伝ってくれなんて言ってないよ。」
「お前はアイツに似て後回しにする癖もあるからな。俺に手伝わせる所までそっくりだ。」
「いつもありがとうございまーす」
「アイツってどなたですか?アスラン。」
「あー、俺の幼馴染…かな。とにかくラスティにそっくりなんだよ。顔も似てるけど、優秀なくせに、全然それっぽくない所とかな。」
「ああ、それは確かに。ラスティ真面目にやったらすごいのに。」
「ホントにな。」
「でもなんか憎めなくて、手伝っちゃいますよね。」
「得な性格してるよ。」
好き勝手言ってくれちゃうなぁ、二人とも。
まぁ当たってる所も多々あるので大人しく聞いておきましょうか。
でも今日はミゲルと一緒に出かけるんだから頑張るもん。
俺はキーボードに向き直り、わき目も振らずに一気にデータを打ち込んだ。
「早かったな。」
「アスランたちにも言われた。」
「愛の力?」
「…それも言われた。」
ミゲルがクスクス笑いながら俺を見下ろす。
ちょっと顔が赤くなってくるのを感じる。
何か、かなり照れくさい。
一緒に出かけるために頑張ったんだけど、そう言われると妙に恥ずかしいのは何でだろう。
「行くか?」
「あ、ちょっと待ってね。その前に洗濯しちゃいたいんだけど。」
「はぁ?明日でもいいんじゃねーの。」
「そう言って結構溜め込んじゃったんだよ。ホラ。」
カゴいっぱいの洗濯物を見せて、ミゲルがちょっと呆れ顔。
やばい。失望されちゃったかな。
…後回しにする癖、直さなきゃな。
「しょうがないな。まぁお前が頑張った分、時間はあるし、ランドリー行くか。」
「うん!あ、ミゲルは?どうせだからミゲルのも一緒に洗ったげるよ!」
「えっ!?おっ俺の…?」
「うん。あるでしょ?」
「ある…けど」
今度はミゲルがちょっと顔を赤くして口ごもった。
洗濯なんて一緒にやっちゃったほうが楽だし、早いよね?
別に何にも困ることってない気がするけど…。
「俺のと一緒じゃ、いや?」
「バカ!そんなことあるか!」
「じゃ、何が嫌なの?」
「嫌ってわけじゃないけど、何か照れくさくないか。」
「照れくさい?」
「お前に俺の洗濯物、洗ってもらうなんてさ。」
「そう…かな?」
「お前と結婚した気分。」
ガッシャーン。
思わず洗濯カゴを取り落としてしまった。
けっけけけ結婚…!?
何言い出すんだ、ミゲルは!!
別に嫌とかじゃないけど、全然嫌じゃないけど!!
って、ちょっと想像しちゃったじゃないか…!
ミゲルが洗濯カゴを拾いながら、真っ赤になってあたふたする俺を見て、ちょっと意地悪く笑った。
あ、俺の反応見て面白がってる顔…!
「あーあ、こんなにしちゃって。」
「だってミゲルが変なこと言うから!」
「そうか?ちょっと似合いそうだけどな、お前が俺の奥さん。」
「やめろよ!!恥ずかしいから…っ」
「可愛いなぁ、ラスティは。」
「ミゲルッッ!!」
「冗談だよ。ホラ、行こうぜ。洗ってくれんだろ。」
ミゲルは、過剰に反応する俺にすっかり機嫌をよくしたようで。
片手に軽々とカゴを持ってくれて、俺の手を引いて部屋まで歩いていった。
ミゲルが溜めた洗濯物の量も、そんなに俺のと変わらなくて、ちょっと笑ってしまったけど。
階下のランドリーに行って、二人分の洗濯物を洗濯機に入れて、洗剤をすり切りで二杯。
パタンと蓋を閉めてスイッチを入れると、水が流れる音がして洗濯機がゴウンゴウンと動き始める。
洗濯機の音って、何か生活感があって落ち着く。
忙しくてそうそう毎日なんて洗濯してられないけど、洗濯自体は好きだなぁ。
ランドリーにある椅子に二人で座って、ボーっと洗濯機を眺めてる。
「目が回りそうだな。」
「ホントだね。」
「…洗濯機の音ってなんかいいよな。ホッとする。」
「うん、俺もそう思う。」
昔から、母さんが洗濯してる音を聞いてたからかな。
くるくる回る洗濯物。真っ白くなって出てくるのってすごく楽しみだし。
洗濯機の音、生きている実感がするね。
明日からは、もうちょっとこまめに洗濯しようかな。
そうだ、またミゲルのと一緒に洗えばいいね。
そうしたら、二人でこうしてまた、一緒に洗濯機の音を聞いてられる。
ちょっとだけ、結婚ごっこするのも悪くないよね?
「…予想してはいたけど…ラスティ。期待を裏切らないな、お前も。」
「すぅ…すぅ…」
「……まぁ、いいか。たまにはこうしてのんびりするのも。」
洗濯機のまわる音を聞きながら、二人肩を寄せ合って
ほんのひととき、『今』を忘れて
懐かしい昔へ思いを馳せて
もしかしたらそれは、どこか遠い未来の姿
サラサラ髪を梳く感触は優しくて、深く眠りの底へと誘った。
「ぎゃー!!日が暮れてる!!ミゲルッミゲルッ!!」
「あー…ホントだ、けっこう寝てたな、お前。」
「嘘!!洗濯物は?」
「乾燥機に入れておいたぜ。真っ白ふわふわだ。ほら。」
「わぁいvv嬉しいvv…じゃなくて!何で起こしてくれなかったの!?遊びに行こうって言ったのに〜!!」
「まぁ、いいんじゃねぇの。お前の寝顔も可愛かったし、俺は満足。」
「うわぁぁぁん!ミゲルのばかぁ〜!!」
「んー、よしよし。まだ夕飯まで時間あるな。…俺の部屋にでも行くか。…眠たいんだろ?」
「!!」
ミゲルの顔が、艶やかな笑みに縁どられた。
遠慮しときます!!
【反省と言うよりむしろ言い訳】
「鬼のいぬ間に『洗濯』」。
洗濯機の音って、なんか好きです。
ラスティは結局どこでも寝ちゃいます。全部お仕事やりっぱなし。
片付けはミゲルさんがしてくれるのです!萌え!!
自分で寝たくせに、起こしてくれないミゲルさんに怒って泣きます。さらに萌えvv
『ラスティはキラ似』は、当家の基本設定です。(笑)
だからアスランがラスティと同室なのです。
2004.03.26
|