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小型で強烈な台風が只今クルーゼ隊で猛威を振るっています。
その三つ編みにご用心!
ジリジリジリジリジリ!!
突然耳元で鳴り出した爆音に、心臓が飛び出んばかりに驚いて目を覚ました。
枕もとを見ると、寝る前にはなかった目覚まし時計。
…この形、この色、間違いなくディアッカのものだ。
コレが鳴るたびに同室のイザークがヒステリックに怒鳴っていたのを思い出す。
確かにこれで起こされたら気分も悪くなろう、凄い音だ。まだ耳がジンジンする。
しかしなんでそんなものが俺の部屋に…?
ガンガンする頭を抱え、とりあえず食堂へ向かった。
何はなくとも朝メシだ。
ん?前を行くはアスランじゃないか。
「おーい、アスラン!」
「ミゲル…?おはよう。」
「どうかしたのか。何か妙に影背負ってるぞ。」
「いや…コレなんだが。」
溜息をつくアスランの手元を見ると、ピンク色のでかい球体が一つ。
目がついてて口らしきものもある。
ああ、もしかしてコレが噂のラクス嬢へのプレゼントか?
「ラクスにと思って作っていたハロなんだが…今朝起きたらちょっと予想外のプログラムが入ってたんだよ。」
「何?」
『ミトメタクナイ!』
「おお!喋るのか!コレ。」
「それはそう…なんだけど…」
『ラクス、スキー!』
「ずいぶん可愛らしいこと教えたなーお前も!」
「いや…違うんだ…」
『アスラン、アカンデェ〜怒ルデェ〜』
「はっ?」
今…何か関西弁らしきものを喋ったような?
アスランはこんなキャラだったんだろうか。
確かラクス嬢はアスランの婚約者だよな?
ウケ狙い…?
「言っとくが、受け狙いとかで俺が教え込んだんじゃない。」
「…だよなぁ。」
「…起きたらこんな風に喋ってたんだ。」
ショックを受けているわけではなさそうだが、かなり驚いてどうしていいかわからないと言った感じでアスランは溜息をつく。
何か今朝は妙なことが起きるもんだな。
なんて考えながら食堂に入ると、もうすでに何人かは食堂にやって来ていてめいめい食事をとっていた。
「あ、ラスティたちがいる。」
「ホントだ。行こうぜ。」
人込みの中でも一発でそれとわかる鮮やかなオレンジの髪を見つけて、俺とアスランはそのテーブルに歩み寄った。
イザークとニコルとディアッカも一緒だ。
今日は割とみんな早いな。
「あ、ミゲルにアスラン。おはようございます。」
「おう。今朝はけっこう早いんじゃないか?あれ?ラスティ、今日三つ編みか?」
「そうなんですよ。可愛いですよね。」
「うん、可愛い。しっかしどういう風の吹きまわ…」
言いかけて、ふとテーブルのディアッカとイザークを見ると、心なしか顔色が悪い気がした。
…?どうかしたのか?
「さあね。じゃ、お先に。」
「え?ラスティもう食い終わったのか?」
「アスラン、ハロ持ってきたの?もう出来上がったんだ?」
「ああ、まぁな。ただちょっと変なプログラミングがされてて。」
「そうなのか?また部屋で見せてくれよ。じゃ、僕は先に行くから。」
ラスティはアスランに蕩けるような極上の笑みを見せて、さっさと食堂を出て行った。
僕…?
アイツ自分のこと僕だなんて言ってたっけか。
朝から腑に落ちないことの連続で頭が疲れてんのかな。
朝食のトレーを貰って席に着くと、イザークが苦々しい顔で俺に詰め寄った。
「貴様、さっさとあれをどうにかしろ!」
「おいおい、イザーク、まだミゲルが原因だって決まったわけじゃないじゃん?」
「貴様あれを見てなかったのか!間違いなくミゲルだ!!」
「何の話だよ?」
「ミゲル、ラスティとケンカしなかった?」
「ケンカぁ?」
「何か著しくラスティの機嫌を損ねることをやったんじゃないのか。」
機嫌を損ねること…機嫌を損ねることねぇ…
昨日の夕方までは普通だったよな。一緒に夕飯食ったし。
そのあと俺の部屋に来て、この間手に入れたばかりのCDを聞いて
何か飲むかって聞いたら珍しくコーヒーって答えたから入れてやって
あ…そう言えば…
「アイツが手にはめてたジンのパペットにコーヒーこぼした。」
「うわ最悪!」
「それだ…間違いない。それでアイツ昨日から機嫌が悪い。」
「さっさと仲直りしてくれよ、ミゲル。飛び火すんだからさぁ。」
ディアッカとイザークがさも面倒臭そうに言い放つ。
謝ったし、もともと俺があいつにやったジンのパペット。
汚れたんならまた新しいのやるよって言ったんだが。
「そういう問題じゃないんだってぇ。頼むよー;」
「大事にしてたパペットが汚れて相当ショックだったんじゃないんですか?」
「多分な。それでミゲルに申し訳ないと思ってたら新しいのやるなんて言われてもっと凹んだんだろう。そういうヤツだ。」
「だからって俺らに当たるなよなぁ、マジ困るんだけど。」
そういやそう言ってからかなり大人しくなっちゃって、拗ねたように部屋に帰るって言って出てったな。
いつものようにただ眠くなっただけかと思ってたけど違ったのか。
それであの目覚ましが俺の部屋にあったわけね。
察するにアスランのハロもラスティの仕業だな。
「悪い。お前らも何かされたのか?」
「俺は今朝3時に起こされた。」
「俺は手渡されたドリンクが青汁だった。」
「あ…そう…。」
やることが子供っぽいというかなんと言うか。
まぁ可愛らしい悪戯ではあるのだろうが、当の被害者らはかなり迷惑顔。
イザークも眉間の皺が濃くなって今にも死相が出そうだ。
低血圧で朝が弱いのを3時だもんな…。
ちょっと同情したくなってきた。
「あ、ところであの三つ編みは?別に意味ないのか?」
「…知りたかったら後ろから声をかけてみるが良い。すでにニコルが犠牲になった。」
「…?」
「アイツ機嫌が悪いと必ず後ろの尻尾毛、三つ編みに編むからなぁ。」
よくわからないが了解して、食事を済ますとすぐにアスランとラスティ部屋に向かう。
アスランが気をきかせて、しばらくニコルの部屋に行っててくれると言ってくれた。
部屋の前でとりあえずノックをしてみる。
…返事はない。
「ラスティ、俺だ。ミゲルだ。」
当然返事はない。
仕方なくパスを打って開けると、ベッドの上で扉に背を向けて寝転がっていた。
猫のように丸めた背中が妙に切なげで、そっと近寄った。
頭に手を置こうとしたらラスティがいきなり首を大きく振って、その拍子に三つ編みの尻尾髪が俺の手を弾いた。
「イテッ!」
…そういうことか。
食堂でのイザークたちの言葉の意味を身をもって実感。
ラスティを見ると、また背を丸めて俺に顔を見せない。
わずかにその背中が震えてる気がして、居た堪れなくなった。
「ラスティ。」
「……」
「ゴメンてば。昨夜は悪かったよ。あんな言い方して。」
「…ミゲルのバカ。」
「あーバカでいいから泣くのだけは勘弁して。」
震える背中に再び手を伸ばしても、今度は拒まれなかった。
掴んだ肩を引き寄せると、空色の瞳が涙で潤んでいて
けれどその瞳は俺をとらえるときつく睨みつけ、唇は真一文字に固く結ばれていた。
俺に背を向けようと身じろぐ体を両手でしっかり押さえてベッドに縫いとめる。
せっかくこっち向いたんだ。話させろよ。
「ミゲルは僕のことなんとも思ってないんだろ。離せ。」
「(まだ僕って言ってる)なんでそうなるんだよ。」
「だってあのパペット…ミゲルが初めて僕にくれたものだったのに…僕にはあれしかないのに代わりなんて利かないのに…また別のやるだなんて」
「悪かったよ。」
「いいんだよ。ミゲルにとってはあれはそれだけのものでしかなかったってことだろ。そんな深い意味はなかったんだろ。僕が勝手に勘違いして勝手に拗ねてんだよ。ほっとけよ。」
「ラスティ」
「ミゲルなんてだいきらいだ。」
もう瞳が涙を溜めきれず、端から透明な雫が零れて頬をつたう。
仰向けに寝転んだラスティの涙は滑らかな肌を滑って耳まで流れ、髪に、シーツに、染み込んでいく。
その涙がきれいで、あまりにきれいで
こぼしてしまうのがもったいなくて
俺はそっとラスティの瞳に口付けて、唇で涙を掬い取った。
「ラスティが嬉しそうな顔してる方が俺は嬉しいからああ言ったんだよ。」
「ん…っ…」
「大事に思ってないわけじゃない。でも物だから、いつか壊れたりするってのは仕方のないことだろ?」
最後に頬にひとつ、キスを落としてそう言うと、覆いかぶさるようにしていた体を半分起こす。
ラスティは寝転んだまま、目をくりくりさせて俺を見ている。
その瞳に、さっきのような凶暴さはない。
「ごめんなさい。」
「なんでラスティが謝るんだよ。」
「いっぱい…悪戯しちゃったし。嫌いって言ったし。」
「良いよ。もう。」
「だってショックだったから…ミゲルいつもすかしてるし、俺のことなんて本気じゃないんだと思って。」
「なんだよそれ。ひっでーな。本気で大事にしてるよ。とりあえず、『大嫌い』は取り消してもらえるか?」
「うん。ミゲル大好き。」
グズグズ泣きじゃくりながらも俺の制服の胸辺りを握り締めてそういうラスティがあんまりにも可愛くて。
その腕を掴んで引き上げるとすっぽり俺の腕の中に閉じ込めた。
背中に手を回そうとしないラスティがじれったくもあるけどやっぱり可愛くて
色々悪戯されたりいじわるされたりしたことも許してやろうなんて思う自分はきっともうかなり末期だ。
「末期だなぁ」
「何が?」
「んー?いやいやこっちのこと。」
ちなみにラクス嬢はあのハロをたいそう気に入ったとかで、アスランはとても微妙な顔をしていた。
末期だねぇ
【反省と言うよりむしろ言い訳】
黒ラスティ。(笑)
"03.black"の予定で書いていましたが、どうもブラックになりきれなかったので変更。
怒ると一人称が僕になるそうです。何か可愛らしい。(笑)
ホントはもっと気張って攻めラスとかにしてみようかと思いましたが、ミゲラスにならないのでやめ。
最後は結局甘甘で強制終了〜。
イザークとディアッカが哀れですね。
2004.02.02
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