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珍しく、起床時間よりもかなり早くに目が覚めた。
宇宙じゃ朝日も拝めないし、特に早起きしても得することなんて無い。
せいぜいマシューの小言が減る程度。さして問題じゃない。
でも、今日に限ってはどうも違ったようだった。
ひ か る
することは特になかった。
新入隊員は一昨日までに全員来て、説明も終えた。
今、早急に片付けなければならない仕事もない。
…なんでこんな時に限って早起きなんかしちまったかなぁ。
でもしっかり目が冴えてしまったから二度寝も出来ないし。
……食堂にでも行くか。
プシュウッとやる気のない音を立てて開いた扉から通路へ出る。
と、ちょうど俺が向かおうとしていた方向に向かってるヤツの後姿が目に映った。
誰だ…?
よくよく見ると、そいつは『赤』だった。
うちの隊で『赤』っていやぁ…
「おい、お前、新入隊員だよな?」
声をかけると、前方を浮遊していたオレンジ頭が振り返った。
その頭の動きを追うように、束ねられたオレンジの髪がふわっと揺れる。
あぁ、やっぱりそうだ。一昨日入ったばかりのヒヨっ子隊員の一人だ。
たった一人、やたら真剣に俺の話を聞いてた、あのオレンジだ。
俺に気づいたらしいオレンジは、クリクリっとした目をこっちへ向けて笑った。
「ハイ!おはようございます!」
「ずいぶん早いじゃん?えーっと」
「ラスティ・マッケンジーです。おはようございます、アイマン先輩!」
満面の笑顔を湛えて、ラスティは俺に敬礼した。
軍人らしさとは程遠いその敬礼が、妙にラスティに似合っていて思わず笑った。
「ミゲルでいいって。ところで何してんの?早いじゃんか。」
「これからイザークたちを起こしに行くところなんです!」
「は?」
「イザークとディアッカ。俺と一緒に入った隊員ですけど。」
「いや、それはわかってるけど…何でお前が起こしに行くの?子供じゃないんだし、放っとけって」
「いや…でも」
「それよりちょっと食堂付き合えよ。早く目が覚めて暇だなぁと思ってたトコなんだ。先輩命令な。」
「うっ、ハイ」
やたら渋り気味のラスティに半分脅し文句を吹っ掛けて、半ばムリヤリ了承させた。
ちょうどいい、新入隊員の話を色々聞いてみたかったんだよな。
隣でブツブツ言ってるラスティの手を引っ張って、俺は意気揚々と食堂へと向かった。
「まぁ座れ。ホラ、茶。それともオレンジジュースのがいいか?」
「えっ?じゃあオレンジジュース…。」
「おう、飲め。おやつも欲しいか?えーと、ビスケットならあるけど…」
「欲しい!」
俺がビスケットの箱を取り出すと、それまで渋ってたのが嘘のように目を輝かせた。
目は俺の手元のビスケットの箱に釘付け。
頭の上からウキウキという擬音語が聞こえてきそうなくらいだ。
……何か…すっごい子供みたいだな、こいつ。
「ホラ。ビスケット。」
「やったー!ありがとうございまーす!!」
「そう言えば、部屋割り、ちゃんと決まったのか?」
「ふぁい!あふらんふぉおふぇが」
「飲み込んでからでいいから。」
俺がそう言うと、慌てたように両手で口を押さえてもごもごしている。
何だろうな、この子供っぽさ。
確か一番年下はニコルってヤツだったし、あとは大体みんな同じ年だった気がするぞ。
って言うかこいつコレでちゃんと試験合格して来てんのか…?
しかも『赤』だぞ、オイ。
…妙に心配になってくる。
そうこうしてるうちに、ラスティがごくごくとジュースでビスケットを流し込んで、顔を上げた。
「俺とアスランが同室になりました。」
「そっか、そりゃ良かった。だいぶ揉めてたから心配してたんだぜ。」
「イザークは絶対アスランとはイヤだって大騒ぎしてましたからね。」
「ホント仲悪いんだな、あの二人。」
「イザークは昔っからすごく負けず嫌いで意地っ張りだから。でもいっそ一人部屋にするって言うと拗ねるんですよ。寂しんぼだから」
「詳しいな。」
「俺とイザークとディアッカ、幼馴染なんです。幼年学校からずっと一緒。」
「へぇー」
「二人ともすっげー寝起き悪くて、いっつも俺が起こしてるんです。」
そう言って、またラスティはビスケットを頬張った。
あのイザークってヤツが寝起きが悪いのは頷けるとしても、コイツが寝起きが良いっていうのは意外だった。
つくづく掴めないヤツだ、コイツは。
「それくらいにしておけよ。朝メシ食えなくなるぜ。」
「あ、はーい!」
「もうそろそろ他の奴らもメシ食いに来る頃だろ…」
「「「ラスティ〜!!」」」
いきなり怒号のような声が響き、プシュウっと開いた食堂の扉から雪崩のように「赤」の連中が入ってきた。
先陣を切ったイザークが、目を充血させてラスティに詰め寄る。
お…オイ、なんだよこの雰囲気。まずいんじゃねぇの?
「ラスティ!ディアッカの目覚ましが鳴る前に起こせと言っておいただろう!」
「イザーク怒鳴らないでください、ラスティが悪いわけじゃないでしょう。」
「うるさい!お前は黙ってろ!あの目覚ましが耳元で鳴るのを聞くと頭がおかしくなるんだ!」
「ワリィ、イザーク。ちょっと先輩と話し込んじゃってさ。明日は一番に起こすから。」
「またお菓子に釣られたのか?ラスティ。全く…朝ご飯の前にあんまり食べるんじゃないとあれほど言っておいたのに。」
「今日はそんなに食べてないぜ!ミゲル先輩が注意してくれたし!」
「おいおいラスティ、まーたオレンジジュース飲んでんのー?髪の色濃くなるぜ」
あっという間に騒がしくなった食堂の一角で、俺は椅子に腰掛けたまま唖然とその光景を見ていた。
見たところイザークがかなり憤慨しているようだったが、俺が懸念したような揉め事には発展せず、和気あいあいと話し込んでる。
思ったより和やかな新入り達の中で、明らかに場を和ませているのはラスティだった。
何をしてるわけでもなく、そこに居るだけで空気が丸くなるような、そんな感じ。
「ラスティ・マッケンジーね…」
誰にでもなくぼんやり呟いた一言が、俺の心にポンと投げ込まれ泉のように波紋が広がる。
ふとラスティがこちらに顔を向け、目が合うとくしゃっと顔を崩して微笑んだ。
オレンジに縁どられた笑顔はまるで向日葵のようだった。
「あっ!ミゲル先輩!!おはようございます!!」
「おはようございます!!」
「おう、おはよう。」
俺に気づいた隊員たちが次々に挨拶と敬礼を投げて寄越す。
それを見て俺も立ち上がると、挨拶をしながら軽く敬礼した。 輪の中に混ざりながら、
嬉しそうにニコニコ笑うオレンジ頭をくしゃっと撫でてやった。
早起きは三文の徳と言うけれど
宇宙じゃ朝日も拝めないし、特に早起きしても得することなんて無い。
せいぜいマシューの小言が減る程度。さして問題じゃない。
でも今日に限ってそれは違った。
この宇宙にも朝日があることを知った。
それはこの先とても重要な意味を持つ出会い
俺の鼻先を、オレンジの香りのする髪が静かに揺れた。
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【反省と言うよりむしろ言い訳】
ミゲラス小説第一弾。
出会い編。(笑)
ミゲルの口調がイマイチ掴みきれなくて苦労しました。
ラスティに至ってはまだまだ探索途中。
私と一緒にこれから成長・進化していくことと思います。
生暖かく見守ってください(笑)。
2004.01.28
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