BGMは『おもちゃの兵隊』


今日のおやつはなんでしょう?


 

 

04.ケーキ

 

 

パラパラと本を捲る。
チョコレートケーキはちょっとしつこいかな。
パラパラと本を捲る。
あ、バナナタルト。これ大好き!


お気に入りのレシピ本を捲りながらホットミルクをすする。
…うーん、あんまりゴテゴテしたのはパスだな。
シンプルで素朴な味のほうが良い気がする。
あ、これ、この手亡のケーキ!これいい!!
俺はがたっと席を立ち上がると、食堂のおじちゃんのところまで駆けて行った。




「おっちゃーん!!」
「お、ラスティ。やっと決まったのか?」
「うん!これ!!これ良いと思うんだけどどうかな!」
「お、いいじゃないか。じゃあ入っといで。」
「ラジャ!」




手招きされるまま、キッチンの中へ入る。
これはもう前々からおじちゃんには承諾済み。
髪をキッチリ結って、エプロンを付けて。
俺はこれからケーキを作るのであります。




「しかしラスティの特技が料理とはなぁ。人は見かけによらないもんだ。」
「どういう意味だよそれ。」
「言葉のまんまだよ。じゃ、俺は向こうで夕飯の支度してるから。なんかあったら呼べよ。」
「サーンキュ!出来たらおじちゃんにも食べさしてやるからさ!」




期待してるよ、なんて笑いながらおじちゃんは奥のほうでザクザク野菜を切り始める。
さ、俺もサクサク始めっかな!




まずは鍋にお湯を沸かして手亡を茹でる。
手亡を茹でている間に粉をふるって、卵を卵黄と卵白に分けて。
おっと、栗の甘露煮ね、食感があるほうが楽しめるし、荒めに刻んどこう。
卵白の泡立て方には自信がある。途中で混ぜ方を変えるのがコツ。
ほら、きめ細かい真っ白な泡がきれいに出来た。
茹でた手亡はフードプロセッサーで滑らかになるまで混ぜる、っと。




しっかしまぁでかいキッチンだよな、ここのって。
暮らしてる軍人の数が数だから、こんくらいの設備と広さがなきゃやってらんないんだろうけどさ。
フードプロセッサーも大型ガスバーナーもみんな最新式。
もちろん食事だって別にわざわざ人が作んなくったっていいような機械もあるんだけど。
やっぱそれじゃ味気ないよなって、おじちゃんは言う。
それは言えてる。やっぱり母さんの味とか、機械では作れない。
人のために人が作ったものだから余計に美味しいなって思うんだ。
俺がこうして作るのも、やっぱり喜ぶ顔が見たいからでそこに機械との大きな差があるんだろうな。




おっと、もうそろそろいっか。
フードプロセッサーの中身をガラスの大きなボウルに空けて、
振るっといた粉類と栗と卵黄を入れて、よくかき混ぜる。
ベーキングパウダーの缶の蓋をカパンッとあけてスプーンで取り出す。
そう言えば前にミゲルが初めてうちに来た時、あんまり緊張したからうっかりベーキングパウダー入れ忘れて焼いちゃったことあったっけ。
膨らまないからびっくりしてオーブン開けて取り出そうとしたら、ミゲルに叩かれた。
危ないだろって。少し青い顔をして。
ドキドキしたのは火傷する寸前だったからじゃないの、気づかれてたかな。
何でかなぁ、いつもミゲルの前で失敗ばっかしちゃうのは。




「ラスティ!膨らし粉、こぼれるぞ。」
「へっ?わぁ!あっぶね!サンキュ、ディアッカ。」
「考え事すると手元が留守になる癖、いい加減直せ。だいたい何してるんだ、そこで。」
「ケーキ作ってんの。イザークたちはお茶の時間?」
「まぁね。俺らもやっと整備終わったしぃー。」




カウンターの向こうからディアッカが俺の手元を覗き込む。
生憎と、もう大体の材料は全部混ぜ込んでしまったので、何ケーキかはわかっていない模様。
俺は気にせず、最後の卵白も混ぜ合わせた。
バターをぬった型に生地を流し込む俺を見て、イザークがコーヒーを啜りながら溜息をつく。




「溜息つくと幸せ逃げるぜ?イザーク。もともと幸薄いんだから気をつけろよ。」
「ラスティ…お前はいちいち一言多い。俺のコレは癖だ。放っておけ。」
「幸せ逃がす癖ってかなり自虐的じゃん?」
「うるさい!」




ディアッカの突っ込みに口調を荒げたイザークにちょっと笑いながら、ケーキをオーブンに入れる。
タイマーは一時間にセット。
焼き上がるまでの時間は俺の大好きなお茶の時間。
パーッと片づけを済ませて洗い物を食洗機にかける。
カウンターから食堂のフロアに出て、俺もサーバーからカフェオレを入れると、二人のテーブルに一緒に座った。




「何ケーキ焼いてんのさ?ラスティ。」
「ディアッカに言ったらミゲルにもばれるから内緒。」
「ばれたら不味いようなシロモノを入れてるのか。」
「不味いって漢字で言うなよ!ばれた所で味は変わんねーよ!」
「そういう問題じゃないだろうが。」
「俺アレがいいな、バナナのヤツさ。」




わいわいお茶を飲みながら何でもない話をする。
俺達の話がまっすぐ進まないのはいつものことなので誰も気にしない。
こんなやりとりが俺らには必要だしね。
ディアッカは見かけによらずけっこう甘いものもイケル口。
タルトが好きだったりする。
イザークはそんなに好きじゃないけど、フルーツのヤツなら割と食べる。
なので、俺達のおやつの定番はバナナケーキかブルーベリータルト。




「あ、じゃあさ、今度休みもらったら三人でいつものケーキ屋さんのタルト食べようよ。」
「ブルーベリーのか?」
「そうそう、『ASHI』のブルーベリータルト!」
「イイねー。つーかさ、わざわざ十等分する理由がわかんないんだけど。切り難いだろ。」
「おかげでいつも最後の一切れを取り合う羽目になる。」
「イザーク甘いのそんなに好きじゃないくせに、譲んないよね。」
「ラスティこそ、そんな細ッこいくせによく食うよ。」
「何の話ですか?」




後ろからかけられた声に振り向くと、マラカイトグリーンのふわふわの髪。
整備を終えたらしいニコルが笑顔で立っていた。
俺も笑顔で返して、隣の席を空ける。




「ありがとうございます、ラスティ」
「どういたしまして。ニコルもお茶?」
「はい。ちょうど今日の仕事が終わった所なので。ずいぶん楽しそうでしたけど何の話をしてたんですか?」
「うん、ケーキの話。」
「ケーキ、ですか?」
「そうそう、今ちょうどコイツがケーキ焼いててさ。」
「へぇ、すごいですね、ラスティ。何か手伝いましょうか?」
「んー、ありがと。でももうすぐ焼ける頃だし、あと上にかけるソース作るだけだから。」
「見ててもいいですか?」
「どーぞ?」




嬉しそうに立ち上がったニコルを連れて、俺はキッチンにリターン。
オーブンでふんわり膨らんでいくケーキを、ニコルはへばりついて見ていた。
可愛い。
俺はソースパンに、蜂蜜とブルーベリー・ラズベリー・クランベリー・アプリコットなんかを入れて、弱火にかける。
温まったソースがふんわりと甘い香りを漂わせた。
ホントはカスタードクリームとか生クリームでも美味しいんだよね。
でもそんなに甘いのが好きじゃない人だから、クリームのベタベタしたのよりきっとこっちの方が気に入るはず。




「ラスティ、ラスティ。もう良いみたいですよ。」
「ホント?じゃ、出すからちょっと退いてて。危ないよ。」
「はい。」




今日はちゃんとミトンをはめて、天板をオーブンから取り出す。
丸い型にはまったケーキはきれいに焼き色がついてて会心の出来。
竹串をさしても何もついてこない、完璧!
型から外して網の上に乗せる。形もきれいに仕上がってた。




「よーし!完璧!!」
「わぁ!すごいですね、ラスティ。美味しそうです。」
「えへへー、サンキュ。」




冷ましてカットしてお皿に載せて。
スプーンでソースをすくってきれいに盛り付ける。
ニコルとイザークとディアッカとおっちゃんの分もちゃんと作ると、俺はキッチンを飛び出した。




「あれ?ラスティ!?」
「ほっとけって。あーあ、すんげーだらしない顔。」
「どこへ行くか、一目でわかるな。恥ずかしいヤツだ。」
「…僕たちはあくまでもおまけのようですね。」
「ま、おまけでも貰えんのは悪くねーし、いただくとしますか。」
















「ミゲル!」
「ラスティ?どうしたんだよ。今ちょうど食堂まで行こうかと思ってたんだが。」
「休憩でしょ?お疲れ様!俺、ミゲルにおやつ持ってきたから、一緒に食べようぜ!」
「ここで良いのか?」
「うん!」




一目散に駆けてきた場所はミゲルの部屋。
ちょうど仕事を終えたらしいミゲルと、扉の前で鉢合わせた。
部屋に入って、テーブルの上に持っていたお盆を置く。




「へぇ、ケーキ。」
「うん、そう。最近ミゲルすごく疲れてるみたいだったからさ。疲れてる時は甘いものかなって。」
「ありがとな。頂きます。」
「召し上がれ。」




ミゲルがケーキをフォークで切り分けて、口に運ぶのを思わずじいっと見てしまう。
あいかわらず食べるのがきれいだなぁ。
あ、飲み込んだ。
どうかな、どうかな。
ドキドキドキ。




「うん、美味い。」
「ホント!?」
「嘘なんか言わねーよ。ホント美味い。ラスティが作ったのか?」
「そう、食堂のおっちゃんにキッチン借りて。」
「…俺のために?」
「え?えっと…そ…そうだよ。ミゲルのため!」
「ハハハ、照れてんの?カワイーなぁ、ラスティは。」
「可愛いっていうな!」
「だって可愛いんだからしょうがないだろ。」




ミゲルに可愛いって言われるとホントすごく困る。
どうしていいかわかんないんだよ、そんなこと言うなよミゲルのバカ!
耳まで赤くなるのがわかって、下を向いたらミゲルに抱きしめられた。
ギュッてしてくれてるその体温が、いつも俺を安心させる。
でも抱きしめ返すのも照れくさくて、いつもただされるままに突っ立ってるだけなんだけど




「つむじ。可愛い。」
「ミゲルッ!可愛いって言うなってば!!」
「無理だよ、可愛いんだからホントマジで。」
「う〜!」
「怒んない怒んない。」




ミゲルが唇で耳をちょっと抓んで、そのまま耳元でありがとうって囁いた。
ドキドキしてドキドキしてやっぱり俯くしか出来なかった。
こんなにバクバクして、心臓壊れたらミゲルのせいだよ。
でもケーキを喜んでくれてよかった。
ちょっと元気になってよかった。
それだけで俺も嬉しくなるんだから相当ミゲルに惚れてるんだよな。




「また作ってよ。俺のためにさ。」




そう言って笑ったミゲルの顔がとてもカッコよくて俺はまた真っ赤になってしまったと思う。
お礼、と言って唇にくれたキスは蜂蜜の味がした。
悔しいからしばらく下を向いてることにしよう。
…このケーキがいんげん豆のケーキだって知ったら、どんな顔をするかな。




 

だってお豆は体にいいんだもん




【反省と言うよりむしろ言い訳】


うちのミゲルさんは豆がお嫌い。
つーか何が書きたいんですか。
ミゲラスなのか、仲良しディアラスイザなのか…;
都合が悪くなると他の人を出して取り繕い、あとあと収拾がつかなくなると言うことを身に沁みて実感。
しかもこれだけ出てきてアスランが出て来ないあたり、私らしいですね、ハイ。
イエイエ、誰も要らないなんていってませんよ!




2004.02.04