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暑くなると、それは必ずやって来る。
嵐の日の過ごし方
「雨、降ってきちゃったね。」
教室から窓の外を見てが呟く。
あたしは持っていた掃除用具を片付けると、窓に駆け寄った。
細い銀の雨がガラスをたたく。
…先週くらいに梅雨明けだってニュースで言ってたのに。
この分じゃ、練習はトレーニングルームかなぁ…。
「?また部活のこと考えてたでしょー。」
「えっ?イヤそんなコトは…」
「顔に書いてあるよー?侑士のプレイが見れなくて残念っ!て」
「〜!それ侑士の前で言わないでよっ!?」
「オレが何やの?」
侑士がひょっこりあたしの肩にあごを乗せてきた。
「ぎゃあ!侑士!!」
「自分…彼氏に向かってぎゃあはないやろ〜。掃除終わったん?」
「うっうん。部活?一緒に行く。ちょっと待ってて。」
「イヤ、今日は休みや言うから帰ろ思って迎えきたんよ。」
「え?」
これくらいの雨で休み?
鬼ブチョーの跡部にしちゃ寛大すぎやしないだろうか。
怪訝そうなあたしの顔を見て、侑士が笑いながら口を開く。
「フツーの雨やったら自主練になるとこやけどな、何や台風が近づいてるらしいねん。せやから大事とって休みなんやて。」
「えー?台風?」
「そういえば朝のニュースでそんなこと言ってたかも…」
「やろ?さんもはよ帰った方がええで。ほなら、帰ろか。」
「う…うん。じゃーね、。」
「うん、また月曜にね。、戸締りはしっかりするのよ〜。」
まるで母親のようにそう言うと、はあたしたちに手を振る。
あたしもに手を振って教室をあとにした。
「…さっきのさんのコトバ、何なん?」
帰り道も半分くらい過ぎたところで侑士が唐突にそう訊いてきた。
「え?ああ、ウチの両親がね、今朝から旅行に出かけてて明日の夜まで留守なの。だから。」
「じゃ…今夜は一人なん?」
「うん。」
「ほぉぉ…」
侑士が口の端をあげて意味ありげに笑う。
…イヤな予感
思わず視線を外したあたしの肩を、侑士が自分の方に引き寄せた。
「ちょっ…何するのよ侑士!」
「今夜台風くんねんでー?怖ないん?オレ一緒におったろか?」
「一緒にって…けっ結構デスッ!」
いかにもあたしのためっぽく言ってるけど、コイツの魂胆なんてミエミエだ。
美味しくいただかれる気はない。
「えー、遠慮せんでもエエのに。」
「してないっちゅうの!放してよ〜!濡れちゃうでしょっ!」
「ああー雨って嫌やなぁ。が遠いわ…。」
侑士が名残惜しそうに肩の手をはずす。
まったく、油断もスキもない奴だ。
「なー、相合傘して帰らんー?」
「やだっ!」
「…冷たいなー。オレとくっついてたくないん?」
「…だって」
「何?」
「侑士…あたしの方にばっか傘むけて、自分の肩濡らすじゃない…。冷やすなっていつも言ってるのに…」
「オレの心配してくれてたんか?」
「…当たり前デショ…」
「ありがとな」
あんまりにも侑士が嬉しそうな顔で笑うから、なんだか恥ずかしくなってプイッとそっぽ向いてしまった。
顔がほてって熱かった。
+ + + + +
「送ってくれてありがと。気をつけて帰ってね。」
「何やほんまに泊めてくれへんのか」
当たり前だと言おうとしたその時
ピカッ! ゴロゴロ!!
「きゃっ!」
「おっ、雷まで鳴り出したわ。風も出てきたし、ホンマやばそうやなぁ。」
「そ…そうだね。」
どうしよう…雷ってマジ嫌いだ。
いつもはお父さんたちがいたからまだマシだったけど。
今夜は一人でこの音と光に耐えなきゃならないんだよね…
……どうしよう…
「じゃ、オレ急いで帰るわ。ちゃんと戸締りせえよ?」
「う…うん。」
どうしよう…
「ほならまた月曜に!」
「あっ…!」
ぎゅっ。
思わず侑士のシャツをつかんで引き止めてしまう。
どうしよう…どうしよう…?
「?」
真っ赤になって俯くあたしを不思議そうに覗き込む。
シャツを握る手にいっそう力がこもる。
「いか…ないで」
「?」
「帰らないで…。一人にしないで…。」
「……」
「ダメ…?」
半泣きに近い顔を上げて侑士を見上げる。
と、そのままあたしは侑士に抱きすくめられた。
「ダメなわけないやろ。こんな顔されたら帰られへんわ。」
「帰れとか居てくれとか…ホントワガママ言ってごめんね…?」
「アホ。こういうワガママやったら大歓迎や。」
侑士は笑ってそう言うと、唇にちいさくキスをくれた。
エアコンをドライにして。
ソファを背に、ひざを抱えて座るあたしを後ろから侑士が抱きすくめる。
カーテンをひいた窓に強い雨風が当たる音がするけど。
見慣れた腕が妙にあたしを落ちつける。
「侑士の腕ってすごいね。あんなに強くスマッシュ打つのに、今はこんなに優しくなるんだもん。」
「そらどーも。今かてもっと強くできるんやで?」
侑士がいたずらっぽくそう言うと、ギュッと腕に力が増した。
不思議。あたしの安心感もそれに比例して高まる。
ゴロゴロ ピシャーッ!!
「きゃああああっ!」
今まで止んでいた雷の音が唐突に耳に響く。
それもかなり近く。
光は見えなかったけど、間違いなくどこかに落ちた音だ。
カタカタ…
震えが起こる。
「、大丈夫やって。落ちたりせぇへんから。」
侑士が髪をなでながらそう言ってくれるけど、あたしの震えはおさまらない。
ドキン…ドキン…
心臓の音が部屋に響きそうなくらい大きくなる。
ゴロゴロ ピシャーッ!
フッ!
「やだ何…!?停電…?」
「みたいやな…。」
「やだやだ!めちゃくちゃ近くに落ちたんだっっ!」
「ちょお…落ち着き、。」
「侑士ぃ、侑士ぃ!!」
突然の停電に、完全にあたしはパニック状態。
半泣きで必死に侑士にしがみつく。
電気の消えた部屋に、外の稲光が妖しい光を映す。
「キャー!光ったっっ!!」
「、落ち着きぃや、な?」
「鳴ったーッ!!近いんだ!侑士、怖いよ侑士ぃ!!」
「!」
「また光った!キャアア……ッ!?」
あたしの叫び声は、後ろ半分侑士の唇に吸い込まれた。
驚いたものの、その直後のものすごい雷鳴に、目を固く閉じて侑士にしがみついた。
「…光ったらにキスする。雷の音が鳴るまでな。キスしてる時間が長くなったら、遠ざかってる証拠や。エエな?」
唇を離して、至近距離のまま侑士がそう囁く。
キスしてる間、確かに前よりも怖さは薄れていたから、あたしは涙目で頷いた。
青白い光が部屋に影を落とすたび、あたしたちは唇を重ねる。
はじめは触れてはすぐ離れた唇が、少しずつ少しずつ深さをましていく。
あたしの意識も、雷から侑士へと移っていく。
いつしか震えはおさまっていた。
「だいぶ遠くなったなぁ」
「…でも…まだ聞こえる…よ…」
侑士が驚いたようにあたしの顔を見つめた。
そして優しく微笑む。
あたしが言いたかったコト、すべてを受け止めてくれるように。
「せやな。ならもう少しこうしていよか。」
「…ウン…。」
固く閉じたまぶたの裏に青白い閃光が映るけれど、次第に雷鳴が聞こえなくなって。
窓をたたく雨風の音さえあたしの耳には届かなくなる。
もう一度部屋に明かりが戻るまで、あたしは侑士のぬくもりに包まれていた…。
…end
【反省と言うよりむしろ言い訳】
初の侑士ドリ、かなり楽しんで書けました。書きながら関西弁をしゃべってみたり(笑)。
しかしこんな話になる予定ではなかったんですけども…(笑)。
はじめに決めていたテーマから逸れたまま終わってしまいました。
あらすじが荒すぎになってる所為です、ホント。
そのテーマは次回にまわそう、ウン。
ヒロイン同様、葉月も雷は嫌いです。
もう幼児体験でトラウマ状態。
雷が鳴ってると外出できません。マジで。
2003.07.08
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