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あたしの好きなもの。
とろけるような甘いもの。
苺のショートケーキ、シュークリーム、チョコタルト。
そして…
You are my only sunshine
キーンコーンカーンコーン
お昼休みを告げる鐘が鳴ると同時に、あたしはかばんを持って教室を飛び出した。
仲良しのに手を振って一目散に中庭を目指す。
「こらー!ッ!!「終わります」までは授業だと何度言ったら…」
廊下にまでこだまする先生の声が、かすかに耳に届いた。
+ + + + +
カサカサ…
足元で歌う芝生にくすぐったさを覚えつつ、あたしは愛しい人の姿を探す。
こんなよく晴れた気持ちのいい日に、彼がココにいないはずはないから。
ああ……いたいた。
あたしはベンチの上に寝そべってすやすや眠っている恋人のもとへ、そっと近寄った。
ふわふわの髪が額にかかって、風が吹くたびにふんわり波うつ。
長いまつげが頬に濃く影を落とし、微かに開かれた唇がゾクゾクするほど艶っぽい。
普段は寝てばっかりなのに、テニスの試合になると瞳が強い光を宿して敵を圧倒していく。
かと思うとちゃっかりあたしの膝でお昼寝をはじめる。
くるくる変わる表情にいつもあたしは振り回されっぱなしだ。
「ジロちゃん…?お昼休みだよ。一緒にお弁当食べようよ。」
…返事はない。
あたしは制服のポケットからティッシュを取り出すと細くよじり、ジロちゃんの鼻をくすぐってみる。
こしょこしょこしょ…
「へくちょん!!」
キャッ!出た出た!!ジロちゃんのくしゃみ!
めちゃめちゃ可愛い〜!!
もっ…もう一回聞きたいなぁ…vv
こしょこしょこしょ…
「へくちょん!」
くっはぁ!可愛スギ!!
鼻血でそ〜////
もう一回…もう一回だけ…vv
こしょこしょこしょ…
「へくへくちょおん!」
いっや〜!もう大声出してかけ回りたい!!
マジ大好きだ、ジロちゃんのくしゃみ。
なに「へくちょん」って!「へくちょん」って!!(壊)
ああヤバイ、襲いかかりたい…vv
ぽてっ
たっぷり五分ほど、あたしが一人で身悶えしている間に、寝返りをうったジロちゃんがベンチから転げ落ちたらしい。
あわてて顔を覗き込むと、全く何もなかったように寝ている。
気づくともう昼休みは十分くらい過ぎていた。
「ねー、ジロちゃん、そろそろホントに起きてー。ご飯食べないのー?」
すうすう
「今日はジロちゃんの好きなオムレツ入れてきたよ?」
すうすう
「あっ、鬼の監督が来るぞぉ〜?跡部くんにも怒られちゃうぞ〜?」
すうすう
くそう寝惚け川ジローめ。
愛しい恋人が呼んでるってのに全く反応を示さないなんて。
「ジロちゃんのバカ…」
「うう…ん」
「!ジロちゃん!?起きたの?」
「うにゃ…か………ばぁ………すぅ…」
……はっ?
かば?かばって河馬!?
あたしが!?
河馬呼ばわりされてちょっと頭にきたあたしは
寝てるジロちゃんをポカポカ叩くと、大の字になって芝生に寝転んだ。
晴れ上がった雲ひとつない空があたしをあざ笑ってるようで、蹴り飛ばしたくなった。
もし今、雨が降ったらジロちゃんは起きてくれるかな。
いや…普通に寝てるだろうな。
そもそも学校に来ないか。
この間の日曜だって、久しぶりにデートできると思ってたのに雨が降って流れてしまった。
本人曰く、
「オレ雨で溶けちゃうのー。だから今日は家でお昼寝ね〜」
お前はナメクジかッ!?
彼女との約束と昼寝とどっちが大切なのよ!バカバカッ!!
でもそんなこと聞いたら普通に「昼寝」とか言われそうで怖い……(涙)
「テニス部でレギュラーだから忙しくて、ただでさえ会えないっていうのに…雨くらいで…。本当に楽しみにしてたのになぁ…」
どうせ聞いてないんだから、ちょっとくらい声に出して言ってみたい。
テニスやって頑張ってるジロちゃんが大好きだし、重荷になりたくないから笑顔のちゃんやってきたけど、正直この間のはかなり悲しかった。
「あたしはジロちゃんのなんなのよぉ…」
「うーん、跡部ぇ…もうちょっとぉ…」
夢の中でも寝てやがる…
…本当に跡部くん呼んで来ようか。
「ジロちゃんは昼寝が一番、テニスが二番。三時のおやつは文明堂だもんね。ははは…あたしはカステラ以下か。」
笑えねー。(涙)
しかもちっとも起きやしない。
はーあ、もう何ヶ月デートしてないんだろう。
氷帝のテニス部はホントに大変らしくて、気を抜くとすぐにレギュラーから外されてしまうんだそうだ。
あたしのせいでレギュラー落ちなんて耐えられないから、普段はおとなしくしてる。
わがままだって絶対言わないようにしてる。
甘えんぼだけど、ぬいぐるみを抱っこして必死に堪えている。
ジロちゃんに時間が出来た時、会えるのを心の支えにして。
でも…ジロちゃんは暇な時はいつでも寝ちゃってる。(凹)
…切ないなぁ。
もしかしてジロちゃんはあたしに会いたくないのだろうか。
あたしが想っているほど、ジロちゃんはあたしのことが好きじゃないのかもしれない。
忙しい毎日でも、こうして昼休みに一緒にいられることがあたしの幸せだったけど、ジロちゃんにはそうじゃないのかも…。
今だってすごく眠たそう…。
なんだか自信なくなってきた…。
それともあたしが甘えすぎなの?
もっと余裕を持たなきゃなのかな…
チラッとジロちゃんの横顔を盗み見ると、あいかわらずスヤスヤ眠ったまま。
あーあ…。
「浮気しちゃおうかな…」
「それは困るー。」
がばっ!
予想外の展開に驚いて飛び起きると、隣でジロちゃんが寝転んだままにっこり笑っていた。
「ジッ…ジロちゃん!いつから起きてたのッ!?」
「んー、割とはじめのほうかなぁ」
「どっどの辺から聞いてた…?」
「「ジロちゃんのバカ」あたり?」
めちゃめちゃはじめじゃん!
てことは独り言全部聞かれてたッ!?
うっひ〜;
「イッイヤ、あれはそのっ…なんていうか別にそんなんじゃなくて、じゃあどんなかというと困るんだけどその〜」
何言ってんだあたし!
でもどうにかしてあの独り言の言いわけをしなくちゃ!
あれじゃあたしめちゃめちゃジロちゃんに不満しか持ってないように聞こえちゃうじゃないよぉ〜
「あんなこと言うつもりなかったんだけど、ジロちゃんがあんまりにも起きないから…いやいや、起きないことに不満なわけじゃないんだけど、ちょっぴりヒマだったからブツブツ言ってるうちに本音がポロッと…」
「ポロッと…?」
どっわ〜!!あたしの大バカ!!
ごまかすどころか傷広げてどーする!
ひーん、泣きたくなってきた。
もう何を言っても自分の墓場を掘り下げてるだけな気がする…(涙)
と、ふいにジロちゃんの腕が伸びてきて、あたしの首にまわったかと思ったらそのまま唇を引き寄せられていた。
いきなり前に倒れた身体を、ジロちゃんを挟むようにして伸ばした両腕で支える。
傍から見たら完璧にあたしが襲っているように見えるのだろう。いや、そうとしか見えない。
幸いにもココは人がめったに来ない中庭の中でも、もっともマイナーなジロちゃんのお昼寝スポットだから誰にも見られることはない。
ないけど…ちょっと恥ずかしい。
体を起こそうとして唇を離したら、首にまわされたジロちゃんの腕にいっそう力がこもって、あたしは再びジロちゃんの唇に吸い込まれた。
苦しさに酸素を求めて開いた口の隙をついて、ジロちゃんの舌が侵入してくる。
キスをする角度を変えて深く深く。
思いがけないジロちゃんの激しいキスに身を捩って逃げを打つけれど、腕の力は増すばかりで。
ジロちゃんの舌から逃げ回っていたあたしの舌も、結局絡め取られてしまった。
唇の熱さに眩暈がしそうだ。
抵抗していた力をふっと緩めた瞬間、天地が入れかわった。
いつのまにか固く閉じていた目をそっと開けると、まぶしい太陽と光に縁どられたジロちゃんの笑顔。
チュッと音をたてて唇は解放してくれたものの、ジロちゃんはあたしにくっついたまま離れない。
そういえばこうやってキスするのも抱きしめてもらうのも、すごく久しぶりな気がする。
そう思ったら引きはがすことも出来なくて、そっとジロちゃんの背中に腕をまわしてみる。
あったかい…
「ごめんね?」
ふいにジロちゃんが囁いた。
抱きつかれたままで顔を見ることが出来ないけど、なんだかちょっぴり寂しい声で切なくなる。
そんな声出さないでよ、ジロちゃん。
「どうして謝るの?」
「かまってあげられなくてごめんね?」
「違う…違うの。あれはそういうつもりで言ったんじゃないのよぅ……」
ふえーん。
ジロちゃんにウザがられたら嫌だからずっと言わないでいたのに、どうしてしゃべっちゃったのよぉ〜
すごく困らせちゃったじゃないか、あたしのカバ。
ああ、ホントに河馬だわ、あたし。
めちゃめちゃ自己嫌悪に陥ってるあたしの頬に、ジロちゃんはチュッとキスをくれた。
「いーんだよ。それが聞きたかったんだから。」
「ふぇ?」
「オレ、あんまりにかまってあげてないのに、全然文句言わないんだもん。あんまり我慢させたくないのにー。」
目をぱちくりさせているあたしとジロちゃんの視線がぶつかる。
にこにこ笑っていたけど、その顔はやっぱり少し寂しそうだった。
「だからね、たぬきしてたんだ。」
「ええっ!?」
「、頑張り屋さんだけど甘えんぼだから。オレが寝たまんまだったら、きっと何か言うんじゃないかと思ったのー。」
うう、バレバレ。
そしてあたしは見事にワナにはまってしまった、と。
あー、バカ丸出し。
「オレのこと一番好きだよ。」
「いいいきなり何言い出すのよ、ジロちゃん!」
ジロちゃんの言葉はいつも唐突であたしを困惑させる。
そんな風にさらっと言われるとどう反応していいのかわかんないよ〜!
「だってホントだもん。オレねー、が一番大好きだよ。」
「あ…あたしもジロちゃんが一番好き…」
「カステラよりも?」
「そのことは忘れて〜!!」
ジロちゃんの目がいたずらっぽく笑う。
ああ、やっといつものジロちゃんの笑顔だ。
あたしの大好きな、おひさまみたいなジロちゃんの笑顔だ。
「オレ、ホントにが一番だよー。お昼寝よりもテニスよりもカステラよりもが好きー♪」
だからカステラは忘れてってば…;
「日曜もね、ホントは会いたかったんだ。でも雨降っててて外出して、がカゼ引いたら嫌だから、オレの家でお昼寝しよーって言うつもりだったんだけど…ごめん、説明不足だったね。」
「そうだったの!?やだ〜!あたしったら勝手に怒って〜!」
「のせいじゃないよ。」
「ううん、あたしのせい。会いたいって言いながらジロちゃんちに行くこと考えてなかったんだから…。ごめんね、ジロちゃん。」
その柔らかな唇にちいさくキスをして、あたしはジロちゃんにぎゅっとしがみつく。
「…誘ってるー?」
「ちっちがう!!そんなんじゃないッ!!」
何てコト言い出すんだ、この人は。
じゃれついてくるジロちゃんをいい加減引き離そうとした時
キーンコーンカーンコーン…
「うええ!?お昼休み終わっちゃったよ!ちょっとジロちゃんどいて!起きて授業出なきゃ…!」
「えー、こんないいお天気なんだよー?授業なんか出たらもったいないよ。」
「何言ってるのよ〜!ジロちゃん今日、朝から授業出てないじゃない!」
「だぁいじょうぶ。久しぶりに二人きりなんだから、もう少し一緒にいよー?」
そういって私に抱きついたまま動かない。
うーん
うーん
うーん…
……負けた。
そんなコト言われて引きはがすなんて無理だ。
「わかった。じゃ、そうしよう。」
観念してそう呟いたあたしを見て、ジロちゃんはやっとどいてくれた。
二人で並んで仰向けに寝転がる。
「ちょっとまぶしいねー。」
…さっきまでずっと太陽に背を向けてたからでしょうが…///
でも今は言わないでおこう。
「ねーねー、ー。おやすみのチューして?」
「なななんですと!?」
「だから、おやすみのチューv」
「恥ずかしいから嫌だ…」
「ぶー。さっきはしてくれたのに〜。来週の日曜は部活ないのにー。」
なにげに脅迫…?
キスしなきゃ遊んでやんないよって?
あう…
「オレはこんなにが好きなのにー。」
「わかったから…。めっ…目閉じて…?」
「うん♪」
ぎゅっと目を閉じたジロちゃんの、形のいい唇にそっと自分のそれを重ねる。
きっと今、顔は真っ赤だろう。
軽くキスをして唇を離したら、ジロちゃんが勢い込んで目を開けた。
「やっやだー!そんなに早く目開けないでよ〜ッ!」
「あー、なんでそっち向いちゃうのー?ー。ー。」
あまりの恥ずかしさにそっぽを向いたあたしの左手をつかんで、ジロちゃんがぶんぶん振ってる。
でも…ちょっとそっち向けない///
と、薬指に温かくて柔らかな感触を覚えた。
それがジロちゃんの唇だと気づいたのはたっぷり十秒ほどあとだった。
「△@★$#§◎◆∞〜〜〜〜!?」
「おやすみーvv」
思わず振り向いたあたしにそう告げると、もう一度、今度は唇にキスをしてそのままコロンと横になる。
いッ今のは何ッ!?
あ…、指、ちょっと赤くなってる…/////
ってしみじみ感動してるな、あたし!
「…」
「なっ…なあに…?」
「ソレ、2012年までの予約だからね…?」
「はっ?」
そのままジロちゃんはスヤスヤと眠りに落ちていった。
どういうこと?
今の言葉にはどんな意味があるの?
2012年…?
まだずっと先。
その頃にはあたしたちはもう二十歳を過ぎている。
その言葉の意味するところ…何の予約かはわからないけど
…それまではずっと一緒にいられるってこと?
ねぇ、ジロちゃん?
なんだか不思議と幸せな気持ちになったあたしは、ジロちゃんを抱きしめて目を閉じた。
2012年に金環食があるということをあたしが知るのはまだもう少し先の話。
そしてジロちゃんがあたしに太陽の輪をくれるのも、まだずっと先のこと…
…end
【反省と言うよりむしろ言い訳】
長ッ!!ムダに長ッ!!
コレはジロちゃんに「へくちょん」ってくしゃみをさせたかったのと、金環食で太陽のリングっていうのが使いたかったので出来た話…。
だから繋げるた |