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逃げだってわかってる。
ガラスいちまい <後編>
鳳くんの前から思わず逃げ出したあの日から二週間。
先週は気まずくて図書室に行くことが出来なかった。
「ー!あれ?今日は眼鏡ないねー」
背中に重みを感じたのと同時に間延びした声が降ってくる。
「ジロちゃん…私今日は朝からかけてなかったのにー。もう放課後だよ?」
私の首に腕を回してじゃれてくるジロちゃんをはがしながら、呆れたように言ってみる。
「今日お天気いいから今まで寝てたんだもん。ね〜、今日一緒に帰ろ〜♪」
ちょっとふくれ顔で、私のYシャツの袖をつかんで左右に振る、ジロちゃんの髪を両手でわしゃわしゃかき混ぜてあやすように言う。 「ごめんね。また今度ね?」
ふわふわの頭を軽くたたいて、私は教室を出た。
+ + + + +
カチャ… 職員室で借りた鍵をカウンターに置く。 誰もいない図書室はとても静かで。 遠くに運動部の掛け声が聞こえる。 久しぶりに入ったけど、やっぱり落ち着くなぁ…。 そんなことを思いながら、私はカウンターに積まれた20冊ほどの新刊を種別して本棚にしまい始めた。 思ったより早く終わるかも…
「えーと歴史の…中国…史は…うげっ!棚の一番上だぁ!」
自慢じゃないけど背は高い方じゃない上に、高所恐怖症。
ギシッ
揺れる揺れる揺れるぅ〜!!(泣)
ドンッ!!
あれ…? …痛く…ない…? 固くつぶった目を開くと、目の前には本棚。 傾いたままの姿勢で私は止まっていた。 否、誰かが私が倒れるところを抱き止めてくれたようだ。
「大丈夫ですか?」
耳元で聞こえる聞きなれた声に、心臓が止まりそうになった。 私鳳くんに抱きとめられてる!? あまりの恥ずかしさに勢い込んで体を反転させたら、今度は体が本棚側に傾いた。 何も考えてなかったけど、どうやら片足は台の上、片足は宙ぶらりん状態だったようだ。
「きゃあっ!」
床の上に降ろしてもらうと、すぐに鳳くんから体を離す。
「先輩はもっと人を頼っていいと思いますよ。」
えっ?
「今日閉館日だって忘れてて、この本の返却日今日までなんです。すみませんが、返却…いいですか?」
思いがけず普通の発言にまぬけな声を上げてしまった。
「じゃ、お名前と学年・クラスをお願いします。」
驚いて顔を上げたのと同時に、鳳くんが私の右手を強く引いた。
『2年A組 鳳長太郎』
「あっ、あの…これは…」
私の手を見ていた鳳くんが、顔を上げて私を見つめる。
「あっ…あの…」
眼鏡がないせいで顔はよく見えない。
「試すようなことをしてすみません。でも、先輩に…先輩の中に少しでも俺がいるのか知りたかったんです。」
私は夢を見ているの?
「先輩には迷惑かもしれないけど…俺……」
「ずっと先輩を見てました」
次の瞬間、私は鳳くんの首に抱きついていた。 理由なんかわからない。ただ無我夢中で。 カウンターによじ登って必死にしがみつく。 こんなことするなんて私らしくない、みっともない。 でもそんなこと構わなかった。 あなたが私とここにいる証が欲しかったから。 知らず、私は涙をポロポロこぼしていた。
「先…輩…?どうしたんですか…。そんな…こんなことされたら、俺、勘違いしますから…」
やっとの思いでその言葉だけしぼりだす。
「先輩…?俺…自惚れてもいいんですか?」
少し震えている鳳くんを抱きしめて、耳元で小さくささやく。
「鳳くんが好きだよ」
鳳くんが私をきつく抱きしめた。
「眼鏡…今日はしないんですか?」
微笑んだその手には私の胸ポケットから抜き取った眼鏡。
「私…眼鏡の自分が嫌いなのっ」
勘違いしたことが恥ずかしくてそっぽを向く。
「してた方が可愛いですよ。ほら…」
かしゃん…。
「ほらね。可愛い」
ぼっ!
「誰にも見せたくない…」
眼鏡をはずして深く口づける。 「さん…」
―立っていられない/////
もう独りで頑張らなくていいんだ。
明日は私が会いに行くね…
…end 【反省と言うよりむしろ言い訳】 …最初に名前を呼ばれる相手がジロちゃんってどうよ? うう、変換少なくてスミマセン。 不自然じゃなく名前を呼ばせるって難しい。 そしてこんないじいじヒロインにしたために、話が動かないこと動かないこと。 でもチョタって結構やるときはビシッと動いてくれそうなので、こんなんでもいいのかなぁ…(自己完結)。
2003.06.26
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