私が生まれてきたことに


君が生まれてきたことに


世界で一番感謝する日。




 

 

Because you are here  -September-

 

 

スカッと広がる高い青空。
少し涼しくなってきた風。
ああ、九月だなって思う時もあるけど、まだまだ暑い。
夏休み気分も抜けきらない中、青春学園中等部は体育祭の練習に燃えていた。
今日の六時間目も、リレーの順番決めやムカデ競争の練習やらで皆外でワイワイしてる。
うちの学校、種目こそほぼ学年別ではあるけれど、縦割りのブロック制なんだよね。
A〜Lブロックで、くじ引きで三学年の組み合わせを決めるの。
そして今年はマイハニーvvのリョーマくんと同じブロックなんだ!
味方同士なんて最高!!
走るリョーマくんを堂々と応援できるんだわ!
あ〜!くじをひいた人よ、ありがとうっ!!

「おーい、〜!」
「桃ちゃん?」
「俺ら二人三脚でペアだってよ。よろしく頼むなー!」
「そうなの?わー!よろしくね!」

桃ちゃんは仲良しのクラスメイト。
リョーマくんと同じテニス部で、あたしとリョーマくんを引き合わせてくれた天使様なのさ♪

「あと二〜三分しかねぇけど、ちょっと練習しとくか。」
「だね!待ってて、ムカデのひも一本外すから。」
「俺のはちまきでいいならすぐ出るぜ。」
「いいの?んじゃ、そうしよ。貸して。結ぶよ。」

そういってあたしの左足と桃ちゃんの右足を結ぶ。
とりあえず歩いてみようということになったけど、リョーマくんより小さいあたしは、桃ちゃんの肩まで手が届かない。
えいっ!根性でつかまってや…るぅぅっ…!?

あわわ!
桃ちゃん歩きだすの早いよっ!
足あってないって!!
おまけにあたしほとんど浮いてるっっっ!!

「もっ…桃ちゃんストップー!!」
「おー?」

 

キーンコーンカーンコーン…

 

「よーし練習終了!今日はここで解散だ。お疲れー!」

先生の声がむなしく響く。
まわりで皆がざわざわと帰り支度をはじめる。

「終わっちゃった…。桃ちゃん、この後は部活?」

足のはちまきを外しながら聞いてみた。

「あー、ワリィ、部活はねーけど家に帰んないといけねーんだ。」
「そっか…」
「ゴメンな!また明日やろーぜ!じゃーなっ!」

そう言って他の皆と一緒にバラバラと帰っていく。
あ…はちまき…置いてっちゃった…
忙しいんだよね…。
うーん…。本番までにちゃんとできるかな…。

 

「何やってんの?先輩。」
「わあ!リョーマくん!!」

びっくりしたぁ〜
突然後ろから声かけないでよぉ〜;

「帰らないんスか?」
「そーだ!リョーマくん相手して!」
「は?」
「二人三脚!!あたし桃ちゃんとなんだけど上手くいかないの!」
「桃先輩と…?ふーん」
「だから練習付き合って。同じブロックじゃない!助け合わないと点が取れないよ。」
「俺とやっても意味ないじゃないスか。」
「ううん!あたし二人三脚自体が初めてだから、まずそれに慣れたいの!それに二人とも歩くのも走るのも早いから、十分練習になる!お願いしますっ!」
「なら別にいいっスよ。」
「ありがとvvリョーマくん大好き!」
「…バカなこと言ってないで早く結んでよ。」

ちぇー、本気なのにな。
ホントクールなんだから。
ちょっと不満も覚えつつ、あたしはリョーマくんの右足とあたしの左足をしっかり結んだ。

「よしっ!じゃ、行くよ!左足からね、せーのっ!」
「ちょっ…先輩…!」

 

ずべっっ!!

 

思いっきり足を踏み出したつもりなのに、足がついて来なくて派手に転んだ。

「いったー!もぉ左足からだって言ったじゃない〜っ!」
「だからそれは俺の足なのか、先輩の足なのかって!」
「あ…ゴメン、あたしの足…。」
「(遅いっスよ)…まだまだだね。」
「うう…足、思いっきり擦りむいちゃったよぅ〜」
「しょーがないっスね…」

リョーマくんはそう言うとはちまきを解いてあたしを抱え上げた。
いわゆる…お姫さま抱っこというヤツだ。

「うええっ!?リョーマくん、何!?」
「足、泥だらけだし洗わないとバイ菌入るよ、先輩。」
「いや歩けるし!恥ずかしいですっ!!」
「小さいこと気にしない。誰もいないから平気っスよ。」

そのまま水飲み場まで連れて来られて、縁に座らされた。
靴と靴下を脱がされると、擦りむいた膝にザーッと水をかけてきた。
生温い…
リョーマくんの手が傷口を洗うように肌の上をすべってく。
触れられた瞬間はとても熱いのに、通り過ぎるとすうっと冷たく感じる。
変なの…あたしドキドキしてる。
顔が赤くなるのがわかるし、何もしゃべることが出来ない。

「あっ!」

傷口にリョーマくんが口づけた。
瞬間、全身にビリッと電気が走る。

「リョーマくん…!何…っ?」
「消毒。」

そう言って脚に次々とキスを降らせていく。
時にはなめるように。
時には吸い上げるように。
あたしの脚を支配していく。
冷たくなった水と熱いリョーマくんのキスに感覚がおかしくなりそうだよ。
不意に脚から熱が遠ざかり、左足をすべる冷たい感触。
知らないうちに閉じていた瞳を開けてそっと左足を見ると、何かがキラッと光った。
そばまで寄せて見ると、銀色の細いチェーンに、小さな葡萄とその葉が揺れるアンクレット。
白銀に輝く葡萄と葉は、水滴に濡れていっそう艶やかに光を放っている。
もしかしてこれ…

「リョーマくん…?」
「自分の誕生日、忘れたんスか。」
「…嬉しい…!」

いつもより少し低いところにいるリョーマくんに抱きついた。
流れる水がいつまでもあたしの肌をすべってく。
リョーマくんが抱きしめ返してから、そっと体を離した。
そしてしっかりと私の目をとらえる。

「HAPPY BIRTHDAY,

そう言った唇がそのままあたしの唇をさらった。
ずるいよ。あたしにその顔を見せてくれないなんて。
照れるとこうしてキスでごまかすの。
だからいつだって、そのポーカーフェイスが赤く崩れたところが見られない。
唇を離した後も、リョーマくんの腕はしっかりあたしを抱いたまま。
するっと伸ばされた手が左足首を撫でまわした。

「ひゃっ!」
「なんか…濡れた素足にアンクレットって誘ってる感じがしない?」
「ちょっと!リョーマくんっっ!!(油断もスキもない!)」
先輩、ひとつ約束。」
「え?」
「はちまき結ぶのは自分でやってくださいね。」
「どーゆーこと…?」
「絶対に桃先輩にこの脚を触らせるなってこと。これは俺のだからね。」
「もしかしてリョーマくん…」
「何スか。」
「…ヤキモチ?」
「えっ」

心なしか、眉をひそめたリョーマくんの顔が赤くなった気がした。
…うわー!うわー!!

「そうなの!?そうなの!?嬉しーッ!!」
「違ッ…!」
「赤くなってる!可愛いっ!!」
「先輩!」

なんか嬉しくなっちゃう。
やっぱリョーマくんは年下だったんだなって思ってしまった。
とびっきりの笑顔であたしはリョーマくんに飛びついた。

「大好き!!」
「…どーもッス。」
「ねっ、ねっ、リョーマくんは?あたしのコト好き?」
「嫌いなら付き合ってない。」
「ぶぅ。」

そうじゃなくて…!
言いかけたあたしの言葉はリョーマくんの口に飲み込まれた。

「好きっスよ。すごく。」
「…恥ずかしい…」
「…(先輩が言えっつったんじゃん)まだまだだね。」

リョーマくんがそのままあたしの首筋にもキスを落として、あたしを抱き上げて縁から下ろした。
素足のまま靴をはくと、手を引かれて歩き出す。

「どこいくの?」
「その足じゃもう練習は無理。送ってくっスよ。」
「走れなくても歩くくらいは出来るもん。」
「たまにはおとなしく休んだら?誕生日だし。」
「じゃあ、これから一緒にケーキ食べてくれる?」
「何それ。」
「リョーマくんと一緒にケーキ食べられるなら帰る。」

誕生日が来ること。 ホントはあんまり嬉しくなかったの。
ひとつだった歳の差がふたつに増えてしまう。
それはとても嫌なことだったから。
でも…

「私の我が侭をリョーマくんが聞いてくれる日だと思えば!」

それも悪くないよね?

「何つまんないこと気にしてるんスか。」
「あれ?わかっちゃった?」
「バレバレッスよ。」
「え…えへへへ」
「…いいよ。今日だけね。」

リョーマくんはちゅっとおでこにキスをくれて。
二人で手を繋いでゆっくり歩き出す。

「他に何かあんの?先輩の我が侭。」
「うーんとね、ケーキのあと、アイスクリームも食べたいなvv」
「…よく食えるね。そんなに。…じゃ、俺の我が侭もひとつ言っていい?」
「うん?何?ファンタ?」
「違うよ。…あのさ…」
「ん?」

 

 

『来年の誕生日も一緒にいよう』

 

…end




【反省と言うよりむしろ言い訳】


リョーマってどんなですか!?
好きなキャラなのに口調がわからない!!
ああ、彼の『まだまだだね』が聞こえてきそうです。
ちなみに私は体育祭の二人三脚、得意でした(笑)。
九月生まれの皆様、おめでとうございますvv


2003.08.28