私が生まれてきたことに


君が生まれてきたことに


世界で一番感謝する日。

 

 

Because you are here  -December-

 

 

買ったばかりの真っ白いスカートの裾をひらひらさせて
街中をスキップするように歩いていく。
クリスマスがあるからなのか
それとも年末だからなのか
12月の町並みはとてもきらびやかで活気に満ちている。
お店の店員さんたちは商魂たくましく声を張り上げるし
道行く人たちの表情もどこか楽しげだ。
ホラ、秋頃に芽吹いた愛の芽が
冬になった今は肩を寄せ合って花を結んでる。
肌を切る寒さはかなりのムードメーカーだね。

「そんなにはしゃいで…転ばないでよ?

振り向けばいつもの笑顔。
でもそれが"みんな"に向ける笑顔よりうんと甘いことをあたしは知ってる。

「だって誕生日だもん。ホントに今日は何でもおねだり聞いてくれるの?」
「そう約束したでしょ?僕は約束は破らないよ。」

周助は優しくそう言った。

「じゃ、早くお家に帰ってケーキ食べよう!」
「そんなに急がなくてもケーキは逃げないよ?」
「だってお店にいたときから早く食べたくてしょうがなかったんだもん!」
「だからあの店で食べていこうか?って訊いたのに。」
「…それはやだったの。」
「どうして?」

わかってるくせに。
あたしの口から言わせたいんだ。
ホントにいじわる。

「お店じゃ周助に甘えられないからっ!!」

言うが早いかあたしは走り出した。
いつもなら足の速い周助にすぐ捕まってしまうけど、今日はケーキの箱を持たせてるから大丈夫。
だって今、絶対顔が真っ赤だ。
あーもう恥ずかしい。
風は冷たいのに、頬が火照って熱かった。

 

しばらく勢いのまま走って。
息が切れたところで足を止めると、お店のショーウィンドウが目に映る。
ちょっと大人っぽいブティック。
ショーウィンドウに飾られたブーツが特に可愛かった。
お店の雰囲気もよくて思わず見とれていると、女の子が3人くらい、やはりショーウィンドウに惹かれたようにやってきた。
高校生くらいかな。

「あたしさー、この間彼にブーツ買ってもらったんだけど、シュミじゃなかったのよねぇ。あーあ、こういうのが欲しかったのになぁ。」
「あんた好きそうだもんねー、こういうの。あんたたちもう1年でしょ?いい加減好みくらいわかってて当然じゃないの?」
「でしょー?ホントわかってないんだよね、アイツ。」
「その点うちの彼氏はわかってるわよ?ホラ見て、コレ!このリング買ってもらったんだから」
「えー!すごぉい!ダイヤ入ってる!やるね!彼氏!!」

他愛のないおしゃべり。
友達とプレゼントの話なんてあたしもする。
でも彼女たちの話はどこか聞いていて寂しくなった。

「どうしたの。」

いつの間に隣に来ていたのか、優しい瞳があたしを覗き込む。

「手が冷たくなってる。早く帰ろう。」

大きな手があたしの手を包み込んで、ゆっくり家路へと歩き出す。
女の子たちが周助を見て黄色い悲鳴をあげているのがかすかに聞こえた。

 

 

 

 

+     +      +      +      + 

 

 

 

「今日のお茶は僕が淹れるよ。キッチン借りるね。」
「え?でも」
「誕生日くらい、奉仕させてくれない?」

その言い方ってなんかイヤらしくない?
…そう言いかけて、思いとどまった。
わざわざ墓穴掘ることないよね。

「じゃ、お願いします。」
「うん、はケーキ食べるお皿とフォーク用意して待ってて。」
「はぁい。」

リビングのテーブルにケーキの箱と、銀のフォーク、お気に入りの花柄のお皿を出す。
特別にティーカップもお客さま用にしちゃおう。
だって今日は特別なんだから。

「お待たせ。ケーキ、どれ食べるの?」
「えっとね、いちごの。」
「じゃ、チーズケーキ貰うね。」
「一口ちょうだいね。」
「はいはい。」

温かい紅茶を淹れてもらって
ケーキもいっぱい買ってもらって
何より一緒にいてお祝いしてくれる。
それだけで良いのにね

、お誕生日おめでとう。」
「ありがとう!じゃ、いただきまぁすvv」
「召し上がれ。」

甘い甘いいちごのケーキ。
普段よりうんと美味しく感じるのはやっぱり周助がいてくれるから
この紅茶だって、周助が淹れてくれたってだけでいつもよりずっと美味しい。
…イヤ、周助の腕がいいせいもあるんだけどね。

「はい、、あーん」
「わーい。あーん。んーvvおいひぃ。」
「…ね。。さっき何考えてたの?」
「さっき?」
「ショーウィンドウの前に立ってたとき。」

すっごく難しい顔してたって言って、周助が苦笑した。
顔に出てたのか…ちょっと恥ずかしい。

「ねー、周助。プレゼントってさ、金額とかじゃないと思うんだよね!あたし!」
「うん?」
「だからね、さっきあたしの側にいた子たちが話してたんだ。彼から貰ったプレゼントが気に入らないとか、高価なものくれた彼氏は彼女の気持ちをわかってくれてるとか。」
「それで?」
「なんかそれ聞いてて寂しい気になったの。」
「寂しい?」
「だってプレゼントって金額なんか問題じゃないよ。相手が自分のこと考えて選んでくれたものなんだよ。その思いとか、自分のことを考えてくれた時間とか、それが大事だと思う。そういうものがプレゼントだと思うのよ、あたしは。」

「だから、あの子たちがプレゼントのことそんな風にしか見られないことが悲しかったの。」

次の瞬間、ギュッと暖かい感触に包まれた。
それが強くて優しい周助の腕だと気づいた時には、もうすでに唇を奪われていた。

「周助…っ?」
「ホントはいい子だよね。」
「ええ?」
「他人のことなのにそんな風に思えて。」
「別にそういうわけじゃないよ…」
「でも、の考え方、すごく好きだよ。」
「あ…ありがとう」
「じゃ、コレも受け取ってもらえるよね。」

周助がカバンの中から筒状の包みを出した。
布のような柔らかい紙に包まれて、リボンが花のように可憐に結ばれている。

「あたしに?」
「他に誰がいるの?」
「ありがとう…!開けていい?」

リボンをほどいて、ことさら丁寧に包装を解く。
だって包装紙にも周助の想いがこもってる気がして、破きたくなかったから。
時間をかけて解いた包装紙に包まれていたのは、週めくりのカレンダーだった。

「来年のカレンダー?」
「そう、そんなに大きくないから、普通のを飾ったあとでも部屋に飾れるでしょ?」
「うん!誕生日にカレンダーもらったのって初めて。わぁ…子犬の写真がいっぱい……。すごく可愛い…!」
「写真のこっち側が書き込むところ。1日分のスペースが広いから、一言日記くらいにはなるよ。にぴったりでしょ?」
「うん、これなら毎日でもちゃんとつけられる!」
「飽きっぽいなら月めくりよりこっちがいいかなと思って。毎週絵が変わるのって結構楽しいし。」
「うんうん!」
「でも日めくりじゃ、毎日なんてめくらないかなとも思ったんだよね。」

ホントものぐさだもんね、と笑われた。
ココはよく理解してくれてると喜んでおこうかな。
でも確かに、そう考えるとあたしには週めくりがぴったりなのだと思った。
…今までずっと月めくりだったから考えてもみなかったけど。

「ありがとう、周助。すごく嬉しいよ。」
「ふふ、その笑顔が見られて僕も嬉しいよ。、一つお願いしてもいい?」
「なに?」
「このカレンダーには僕との予定だけを書き込んでくれるかな?」

一瞬二人の動きが止まって。
それから二人で笑いながらキスをした。
約束するよ。
このカレンダーを周助のことでいっぱいにしてみせる。

「あ、そうだ!」

カバンからオレンジのペンを取り出す。
不思議そうな顔をする周助の前で、カレンダーをめくって
あるページで手を止めて、その日に大きくペンで花マルをつけた。
2月29日
4年に一度のあなたの日だよ

…」
「4年分お祝いしなくちゃね。」
「ありがとう。」

本当に嬉しそうに笑って、周助があたしを優しく抱きしめてくれる。
だってあなたがあたしの誕生日をこんなに喜んでお祝いしてくれるように
あたしだってあなたの誕生日を盛大にお祝いしたい。
こうして側にいてくれることが一番の幸せだと感じられることをあなたにもわかって欲しい。

が生まれてきてくれてよかった……」
「ありがとう周助」
「お誕生日おめでとう、。」

 

いちごのケーキよりもチーズケーキよりも
バースディキスは格別に甘かった。

 

…end




【反省と言うよりむしろ言い訳】


バッチリ落としましたが(笑)、とりあえずギリギリ許容範囲内にアップできてよかったと思ってます;;
今回でお誕生日シリーズも6作目、折り返しにさしかかるということで今回は"プレゼント"について考えてみました。
色々考え方はあると思うけど、私はやっぱりプレゼントは相手の気持ちだと思うのです。
プレゼントを考えるのが苦痛になるくらいならあげないほうがいいんじゃないかな、なんてね。
要はお祝いする人の気持ちがあれば良いのではないでしょうか。
カレンダーのエピソードは、今年だから出来ること!と思って書いてみました。
12月生まれの皆様、お誕生日おめでとうございますvv

2003.12.01