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私が生まれてきたことに
君が生まれてきたことに
世界で一番感謝する日。
Because you are here -October-
アップルパイ、洋梨のタルト
栗蒸し羊かん、松茸ご飯
スイートポテトにきのこのグラタン
かぼちゃのポタージュ、ほうれん草のキッシュ
エトセトラエトセトラ。
和洋中華入り混じった様々な料理のお皿が、今あたしの目の前に所狭しと置かれている。
「ー、もうすぐお誕生日だねー!」
ジローくんが九月の頭くらいからそう言って、あたしにプレゼント何がいいー?って聞いてくれた。
そんなに前から気にしてくれてることがあたしにしてみれば驚きで。
すごく嬉しかったから、ジローくんと一緒にいられればそれで十分と答えた。
「そんな遠慮しないでー!何したい?どこ行きたい?何欲しい?」
遠慮でも社交辞令でもなんでもないよ、ジローくん。
本当にそれで十分幸せなの。
でもイベントをすっごく大切にするジローくんはちょっと不満気。
それじゃダメだよ〜と言うと、ドンと胸を叩いた。
「じゃ、俺にまかせて!誕生日は空けといてね〜」
そう言って…今日に至る。
「やっぱお誕生日はスペシャルでなきゃ、ねっ?」
お皿の向こう側からジローくんがそう言って笑った。
放課後、ジローくんに手を引かれるままやって来たのは一軒のレストラン・カフェ。
こじんまりとしているけど、とても洗練された、感じのいいお店だった。
インテリアとかこう…すごく可愛くて小説に出てきそうな感じ。
「ここねー、おじさんがやってるの。こういうところ好きでしょ?」
あたしに椅子を勧めながら、ジローくんがにこにこしてる。
あたしの好きなものとか…ホントによく解ってくれてるんだぁ…
そんなことを考えて頬が緩む。
そういうちょっとしたことがすごく嬉しかった。
「そんなわけで、のお誕生日スペシャル!秋の味覚食べつくしディナー!」
「えぇ!?コレ全部?」
「だいじょーぶだよ。ぜんぶ量少なめにしてもらったから。いろいろ食べられたほうが楽しいでしょ?」
「うん。すごい…ホント色々ある…」
「えへへーvvまずは乾杯しよーよ」
二人で向かい合って、ワイングラスをカチンと合わせる。
中身は白葡萄のジュースなんだけど、ちょっと大人になった気分。
と、ジローくんがあたしにリボンのかかった包みを手渡した。
「誕生日おめでとー!これプレゼントー!」
「わぁ…いいの?だってこんなにすごいディナー用意してもらったのに、その上プレゼントなんて…」
「ディナーはおじさんのサービスだからいいの。ほら、開けてみてー♪」
「うん!」
リボンを解いて包みを開くと、中から出てきたのは…
「…しおり?」
「そー。ご本好きでしょー。あのね、このクリップんとこを表紙に留めて、この鎖をページに…こう…はさむの。」
「わぁ…!すごい可愛い!おしゃれだね!」
ジローくんのくれたしおりは、ただの紙の板じゃなくて金色の小さなクリップ状のプレートに、長い鎖のついたとてもセンスのいいものだった。
鎖の先はリングになってて、それが閉じた本の下から見え隠れする。
ホントにホントに素敵なもの。
「ありがとう、ジローくん!大切にするね。」
「どういたしましてー。じゃ、食べよっか。」
「うん!頂きます!」
あたしたちはフォークを取り上げて、ぱくぱくディナーにかじりつく。
お料理はホントに美味しくて。
ジローくんの笑顔がまぶしくて。
あたしはいつもより笑い上戸になっていた。
レストランに中学生が二人で来るなんてなかなかしないし、出来ない。
だから余計にテンション上がっちゃったみたい。
すっかり雰囲気に酔ってるんだ、あたし。
あーどうしよう、すごく楽しい。
こんなに楽しい誕生日って、生まれて初めてかも知れない!
ひととおり食べ終わって。
食後にあっついミルクティーを頂きながらおしゃべり。
いつもの他愛無い部活の話でも、こういうところでするとまた特別。
ジローくんもそう感じてるのかな。
今日は眠いって言わないね。
すると、一人のウェイターさんがお皿を持ってやって来た。
テーブルに置かれたのは真っ白なお皿に乗ったパイ。
二人分くらいの小さなホールパイだった。
「、ガレット・デ・ロワって知ってる?」
「えっ何?」
「ガレット・デ・ロワ。」
「知らない…。このパイのことなの?」
「そう。王様のお菓子って意味なんだよ。フランスで新年に食べるんだって。切り分けた中にフェーブって言う陶器が入っていた人が、その日王様になってしゅくふくを受けるの。」
「へぇー!なんだか素敵なパイだね。」
「でしょー?だから一緒に食べよう。」
「うん。あ、でも何で今日?新年に食べるものなんでしょ?」
あたしはそばに置いてもらったケーキナイフでパイを二つに切り分けながらそう聞いた。
ジローくんがお皿に取り分けてあたしに手渡す。
受け取ろうと手を伸ばしたとき、ジローくんの瞳があたしの瞳を真正面から捕らえた。
お皿がその手から離れない。
「ジローくん?」
「にとって今日は新しい年の始まりでしょ?それに俺はがいないと一年が始まらないから。だからが生まれたこの日がにとっても俺にとっても、新年の始まりなの。」
「ジローくん。ありがとう。」
「俺ね、に天使をプレゼントするから。」
「え?」
「に天使をプレゼントするよ。」
もう一度にっこり笑って、ハイとお皿を私にくれた。
…どういうこと?
ときどきジローくんの言うことは、何かを超越してる気がする。
すぐその時には意味がわからないことがよくある。
何が起きるかわからない。
でも不思議と、不安とかそんなのは全くない。
むしろ…とてもわくわくする。
焼きたてのパイはサクサクで、フォークを入れると小気味よい音を立てた。
中のクリームも絶品で、ミルクティーにとてもあう。
王様になるのはどっちなんだろうなんてドキドキしながらパイをくずしていたら。
突然
カツンと何かに当たった。
パイの中から現れたそれは
小さな
小さな
天使だった―――――――
「ジローくん…これ…」
「言ったでしょ?に天使をあげるって。」
そう言って笑ったジローくんは、私から天使を受け取るとしおりのリングの先に取り付けた。
鎖の先で天使がゆれた。
「これがほんとのプレゼントだよー。」
だってあたしが適当に切ったパイで。
そのパイの真ん中に天使は居て。
どうしたってジローくんはその天使の位置を知る術はないはずなのに
今あたしの手の中で、確かに天使はゆれている。
「天使のしゅくふくを受けたから、が王様ね。」
それはまるで手品のようで。
あなたはまるで魔法使いのようだ。
そう、今日のこの日に魔法をかけて、私をとびっきりの王様にしてくれたの。
魔法使いはひざまずき、私の手をうやうやしく取ると祝福のキスを捧げました。
「なんなりとごめいれいを、王様。」
そんなあなたが愛しくて。
世界で一番大好きです。
「私にあなたの祝福を。」
「おのぞみのままに。」
私の愛する魔法使いは、私を抱きしめてキスをした。
…end
【反省と言うよりむしろ言い訳】
ガレット・デ・ロワは私の憧れのお菓子。
平たく言ってしまえば王様ゲームみたいなものですけど、ちょっと夢のあるお菓子ですよね。
ジロちゃんならこんな演出もファンタジックで素敵かなと。
10月生まれの皆様、お誕生日おめでとうございますvv
2003.09.29
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