私が生まれてきたことに


君が生まれてきたことに


世界で一番感謝する日。

 

 

Because you are here  -January-

 

 

「あ、周助ー、ついでにみかんとってー。」
「はいはい。はい、どうぞ」
「ありがと。」

もぞもぞ、コタツの中に入れてた手を出す。
ちょっと呆れたように微笑んで、周助がみかんをひとつ手渡してくれた。
反対の手にはお盆に乗せたマグカップが二つ。
そっと置かれたそれには、湯気の立つココアがたっぷり注がれていた。

「やーん周助ってば気が利くうvv」
「どういたしまして。熱いから気をつけて。」
「いただきます。」

周助の愛のココアをひとくち。
うーん、甘くて温かくて幸せ!
ずずっ。
あ、今すごい音立てちゃった。
チラッと周助のほうを見ると、さして気に留める様子もなく、コタツに入ってテレビのチャンネルをぱしぱしやっていた。
付き合い始めの頃は二人きりなんて、緊張して息も出来ないくらいだったのに。
今じゃ平気でコタツでゴロゴロしてる。
周助をパシらせたりお茶淹れさせたり。
ここの家の主はあたしだったような気もするんだけどな。
親衛隊の子に見つかったらきっと卒倒されそう。
でもまぁ、こんなもんよね。
…なんて開き直ってる自分もどうかと思うけど。

「うーん、あんまり面白いのやってないね。」

まだチャンネルをぱしぱししながら周助が呟く。
TVではもうすっかり見飽きた着物のアナウンサーが都内のグルメスポットなんかを紹介してる。
『あけましておめでとうございます』はもう聞き飽きた。
特別番組ばっかりですっかり曜日感覚もおかしくなってるし。

「いずこもまだオトソの酒に酔っ払ってんでしょ。」

かく言うあたしもまだコタツから抜け出せない時点で十分お正月気分から抜け出せてないんだけどさ。

「手厳しいね、は。」
「そう?だって早く普通の番組が見たいし。もう特別番組飽きたー。」
「そうだね。」
「そう言えば周助、今日は何時までいられるの?」

一人暮らしを始めたあたしと違って周助は実家暮らし。
いくら男の子とは言え、あんまり遅くまでは一緒にいられないんだよね。

「今日はずっと一緒にいるよ。」
「え?ホント?大丈夫なの?」
「うん。」
「わーい!やった!じゃ、晩御飯どうしようか!」
「今日は久しぶりに外で食べない?」
「外で?いいよ。」
「良かった。実はもうレストラン予約してあるんだよね。」

断られたらどうしようかと思っちゃった、なんて言って周助が笑った。
ウソだ。
あたしが断るなんて全く考えていなかっただろう。
もう付き合ってかなり経つけど、一向にあたしは周助には敵わないんだから。
でも周助の提案は純粋に嬉しかったから、あたしも笑って見せた。

「何時に予約入れたの?」
「七時。車でちょっと行ったところだからそんなにかからないと思うよ。」
「でももうそろそろ準備した方がいいよね?」
「そうだね。」
「じゃ、あたしちょっと着替えてくる。」

リビングからパタパタと駆け出して、部屋に入って扉を閉める。
別に今さら隠すとこなんてないけど、さすがにあたしにも恥じらいってものがあるので。
クローゼットを開けながら、それで今日は周助がちょっとお洒落して来てたんだ、なんて思った。
何かちょっと嬉しいな。
あたしと一緒に夕飯を食べに行くのにお洒落してくれるその気持ちが。
だからあたしは周助が好きで、いつまでも恋してる初々しい気持ちを忘れないでいられるんだ。
今もこうして、何を着ていこうか真剣に悩んでしまう。
こんな時の自分がすごく好きだなあって思う。
色々迷ったけど、お気に入りの白のフレアスカートに決めた。
ボーダーのタートルネックのセーターに、シルバーのクロスペンダント。
ほんのちょっとだけ香水を吹きかけて、部屋を出た。

 

「お待たせー。時間平気?」
「平気だよ。、すごく可愛い。」
「…ちょっと恥ずかしいけど、ありがとう。」
「僕のためにお洒落してくれたんでしょ。嬉しいな。」
「それはお互い様でしょ?私も嬉しかった。…行こっか。」
「待って、忘れ物。」

何?と振り向きかけたあたしの首を、後ろからふんわりと何かが覆う。
淡いピンクのふわふわのマフラー。
綺麗な色で、柔らかくて、とても暖かい。
でもあたしが持ってるマフラーじゃない。

「周助、これ…?」
「お誕生日プレゼント。おめでとう、。」
「えっ?あっ…そうか、今日あたしの誕生日…」
「忘れてたの?らしいね。」

後ろからマフラーごとあたしを抱きしめて、周助がクスクス笑った。
吐息が耳に当たってくすぐったい。
どうしよう、すごく嬉しい。

「良かったこれにして。のそのスカートによく似合ってるから。」

周助の言うとおり、優しい色合いのマフラーは白いスカートにも主張しすぎず、ふんわり引き立ててくれる。
とても軽くて暖かくて優しくて、包まれてるだけで幸せになれそう。
まるで周助みたいだね。

「どうもありがとう、周助。」
「どういたしまして、ねぇ、。ひとつ話したいことがあるんだけど。」
「うん?なぁに?」
「ホントはお店で言うつもりだったんだけど、今でも良いよね。あのね…僕、家を出るつもりなんだ。」
「え…?」

思わず振り返ったら周助の優しい瞳とぶつかった。
今何て言ったの…?

 

 

「だからね、。一緒に暮らさない?」

 

びっくりして声が出なかった。
でもすごく嬉しくて、あたしは周助に飛びついた。
どうしよう周助、こんなに嬉しいこといっぱいで。
絶対あたしプレゼントもらい過ぎだよ。
バチ当てられちゃうかもしれないね。
そう言ったら周助も笑ってあたしを抱きしめた。

と一緒ならバチを当てられても怖くないよ。」

交わしたキスはココアの味がして、二人で声を上げて笑った。

 

新しい年の始まり、新しい歳の始まり。


あたしたちの新しい生活が始まる。

 

…end




【反省と言うよりむしろ言い訳】


マフラーってかなりオーソドックスかなとも思ったんですけど、こういう渡され方ならまたひと味違うかと。
っていうかいいかげん包装の表現がネタ切れになってきまして(笑)。
今回は二人とも少し大人のイメージで書いてみました。
それにしてはヒロインの精神年齢が低いような…?
新年は色々と気持ちが新たになる気がしてとても好きです。
1月生まれの皆様、お誕生日おめでとうございますvv

2003.12.28