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晴れ上がっていた空が、悲鳴をあげて泣き出した。
嵐の夜に
「うっへー、びっしょびしょっ!」
「今タオル持ってきてやるからそこで待ってろ。」
「朝は晴れてたのにーっ!」
「今日は台風が来るっつってただろ。」
あたしにタオルを渡しながら、景吾がさも当然のように言う。
「知らなかった!そうなの?だから部活休みだったワケ?」
「そうだよ。このオレがわざわざ教室まで迎えに行ってやったってのに、コート横なんかで待ってやがって。傘も差さずに…バカだろ、お前?」
「どーせバカですよーだ。ヘックション!」
「とりあえずあがれ。」
そう。
台風が来るとも部活が休みとも知らなかったあたしは、放課後いつものようにテニスコート横にいた。
『今日はギャラリー少ないなー』なんてバカみたいにボーっとフェンスにもたれていたもんだから。
それに気づいた景吾が迎えに来てくれたときにはもう結構濡れてしまっていたのだ。
そのまま二人で相合傘して景吾のマンションまで来たのだったが…
「、風呂に湯はったから入れ。どうせ今日は泊まってくんだろ?」
「えっ…その…」
「泊まってけ。もう電車止まっちまってるしよ。」
「マジ!?」
景吾がつけたTVからは確かにあたしが使う電車の全線ストップのニュースが流れてた。
あっちゃー…
「明日は土曜だし、今週末泊まりに来るつもりだったんだからいいじゃねえか。」
「う…ん。」
「んじゃ、とっとと風呂入れ。」
「あたしより景吾が先に入りなよ!」
「アーン?」
「だって景吾びしょびしょじゃん。風邪ひくよ!」
「そのコトバ、お前にそっくり返してやんよ。ウダウダ言わずに入れ。」
「ヤダッ!」
帰り道、強い雨風の中をあたしの方にばっか傘を向けてくれてた所為で、景吾もかなりズブ濡れになってる。
あたしのせいで景吾に風邪をひかせるなんて絶対イヤだ。
「オレ様は風邪なんかひかねえんだよ。」
「先月ひいてたじゃない。ね、先入ってよ。」
「オレ様の好意をムダにすんのか?」
「景吾こそ、あたしの気持ちを踏みにじる気?」
景吾も強情だけどあたしもいい加減強情で。
言い争いは堂々巡りだった。
「ちっ、面倒くせーな。」
「うわぁぁっ!何すんのよ〜!」
「うるせぇ。黙ってろ。」
あんまりにもあたしが折れないもんだから、ついに景吾が痺れを切らし、腕力にモノを言わせてきた。
あたしは担ぎ上げられて、あっという間にバスルームまで連れて行かれる。
「ヤダ〜!!ズルイ景吾ッ!!あたし先になんて入らないからっ!」
「誰も先に入れるとは言ってねぇだろ。」
「へっ?」
ストン。
脱衣所に下ろされる。
目の前には景吾の顔。
心なしかニヤッと笑っているような…
……ちょっと待って。
もしかしてコレって――――――
「一緒に入りゃ、文句ねえよな?」
「うっそー!!」
+ + + + +
「」
「……」
「、ほらタオル」
「……」
「…いい加減に機嫌直せよ。」
ソファにひざを抱えて座ったまま、あたしはプイッとそっぽを向いた。
だってだってだって!
景吾ってばお風呂に入ってる間中、好き勝手に言ってくるんだもん!
やれ肌が桜色だの、うなじが色っぽいだの。
嬉しくない訳じゃないけど、すっごく恥ずかしいワケで。
見るなって言うのに見てくるし。
恥ずかしいって言うのに平然としてて。
さすがのあたしも耐えかねて、かなり怒りぎみなのです。
「ったく。オレはお前の身体で知らねートコなんてひとつもねぇんだから、いまさら風呂ぐれーでグダグダ言うなよな。」
「っ!そういうことを言うなぁっ!!」
あたしは更に真っ赤になって、持っていたタオルを景吾に投げつける。
が、景吾は難なくソレを受け止めて、あたしに近寄ってきた。
「あーあ、びしょびしょじゃねーかよ、ったく。」
そう言って、あたしを抱え込むと髪をわしゃわしゃタオルでふいた。
ズルイよなぁ…
こうやっていきなり甘くなるんだから。
…もう怒れないじゃないか。
ちいさくため息をつくと、あたしは景吾の胸に背中をあずけた。
いっそう優しくなった腕があたしを包み込む。
静かな部屋に、窓に打ち付ける雨の音だけが響く。
「あたし…部屋で聞く雨の音って嫌いじゃないな」
「あ?」
「嵐の日にね、こうやって部屋にいるとなんだか安心するの。外は嵐なんだけど、あたしは絶対に安全なんだって保障されてるのがわかるって言うか…」
ふいに景吾が後ろからあたしの顎を持ち上げて、唇を重ねてきた。
唇から景吾の熱が伝わって、すごく幸せな気持ちになる。
ぼぅっと夢心地のようなあたしの顔を見て景吾が満足そうに笑った。
「こうするともっと安心するんだろ?」
「…ウン、そう…」
「バーカ。そういう時は初めから、素直にオレの側だから安心するって言っとけよ。」
景吾がそう言って、もう一度キスをくれる。
キスの温度が上がる。
濡れた髪を長い指がゆっくりと梳く。
首筋に景吾の髪があたってくすぐったい。
その広い背中に腕を回すと、あたしの身体がゆっくり傾いた。
景吾の熱を感じながら、あたしは子守唄のような雨音を聞いていた。
雨が降ってもこの腕の中なら何も怖くない。
あなたさえ、側にいてくれるのなら…
…end
【反省と言うよりむしろ言い訳】
…ぬるくてスミマセン(笑)。
ホントに、もっと甘甘ドリが書きたいです。
とりあえず「嵐の日の過ごし方」の跡部ver.ということで、忍足の方で消化できなかった部分を書いてみました。
葉月は嵐の日に部屋にいると、外で難儀しているであろう人々のことを思ってなんだか優越感を感じてしまいます(笑)。
なんて黒い奴…
2003.07.10
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